細美武士とTOSHI-LOWが語る、the LOW-ATUSが体現するフォークの世界

「こういう状況だから、逆に自分の主義主張をしっかり持ったほうがいいと思う」(細美)

―緊急事態宣言で飲食店での酒類販売が禁止になって、販売は出来ないけど、罰金箱を置いて「飲んだら罰金で500円!」ってやっているのが話題になってましたね(笑)。

細美:売ってるのと一緒じゃん(笑)。

―はい。しかも、評判が良くてハッピー罰金アワーまでやってたという(笑)。

TOSHI-LOW:江戸時代の落語みたいな話だよね。今みたいな話でさ、現実の方がすごいんだよ。虚構新聞に勝ってる(笑)。超面白いね。いいと思うよ。「こう言われたから、ちゃんと守らなきゃいけない」じゃなくて、「こう言われたから、いかにそれをかわして生きてやろうかな」って俺も思ってるタイプだから。

細美:でも、やっぱり同調圧力みたいなものはどこにもあってさ。コロナでイベントが中止になった時に、「出演予定だった全バンドが出るから、配信に出てください」みたいに言われることがあったんだけど、「全バンド出るからっていう理由では出ないですよ」って逆らい続けるのってけっこう体力がいるんだよね。「これって同調圧力だよな」って途中で気づいたんだけど。でもこういう状況なんだから、逆にもっとみんなが自分の主義主張をしっかり持ったほうがいいと思う。俺は、「何であの人たちは配信にはいないんだろう?」って思われても、何の言い訳もしないでいるぐらいのことは続けたいなって思ってる。去年はあんまり気づかなかったけど、これくらいコロナが長期化してくると自分の中にそういうアンチテーゼみたいな思いがまだあるんだなって感じてさ。いろいろ学びになってるよ。

―ライブに関してもう一つ聞きたいんですが、音楽ファンの方の中でも「こういう時にライブやってくれてありがとう」っていう人と、「こういう時にライブはやめてください」っていう人がいる。この価値観の衝突をどう感じていますか?

TOSHI-LOW:そもそもライブなんて来たいヤツだけが来ればいいんだから、来ない理由まで尊重する意味がわからないんだよね。来れない人は来ないんだから。それでいいじゃん。

細美:自治体とか、町とか村から来ないでくれって言われちゃった場合はない方がいいと思ってるけど。

TOSHI-LOW:それは度合いよね、もちろん。

細美:そうじゃない状況でライブを観に来る、来ないは、自分で選んでよって感じだね。

TOSHI-LOW:その後ろの正義立てなんか、別に何にもいらないじゃん。要は“俺が好きだから観に行く”だけでいい。もし、自分の職業的に“コロナの感染の心配があるので行けないんです”だったら、行かないでいい。

細美:俺たちのファンってけっこうそういうところ、ちゃんとしてると思っててさ。そもそも、自分で考えて行動しないと、ライブハウス界隈って上手くやっていけないじゃない? だから、「めちゃめちゃ行きたかったんですけど、自分で考えて今回はチケットを取らないことにしました」ってすごくニコニコしながら言ってくるヤツもいるし、「どうしてもストレスが溜まってるので、今回は行きます」ってヤツもいる。そんな感じの人が多いよ。自分以外の誰かに対して「行かないでほしい」とか「行った方がいい」とか、そういうのはないよね。

―「みんな我慢してるんだからお前も我慢しろ」みたいな声は上がってない?

細美:うん。

TOSHI-LOW:そういうこと言うのって暇か、ヤキモチなんじゃない?

細美:“僕は行かないって決断したしそれは正しいと思ってるけど、行かれる方は気をつけて楽しんでくださいね”みたいな連中が多い。

TOSHI-LOW:大きい盆の上に乗っちゃうとファンもいろんな人が集まるじゃん。だから俺たまに篩(ふるい)にかけるもん、スゲぇこと言ったりして(笑)。じゃないと、乗ってる盆がグラグラしちゃって「あれ? TOSHI-LOWってそんな人だと思わなかった」みたいなこと言われるの嫌だもん。「俺なんてこんなもんだよ」って、常に見せておかないと。リアルなクズなところ見せてやるよ、幻滅しろ!って、マジで思う(笑)。

細美:定期的にそれできる人って強いよね(笑)。

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