FBIは「おとりチャットアプリ」をどのようにして裏社会に浸透させたのか?

United States Department of Justice


では、どのように作戦は始まったのか? 作戦の起こりは2018年、それまで闇社会で使われていたファントム・セキュアというメッセージアプリを、FBIが摘発したところから始まる。カナダに拠点を置くある企業が、電話やメッセージ、GPSなどの基本機能を消去し、同様に細工されたデバイス以外とは連絡できない暗号化メッセージアプリをインストールしたデバイスを手に入れた。ファントム・セキュアが摘発された後、ユーザーたちは他のメッセージアプリへの移行を始めたが、このユーザーたちをあえて追わず、泳がせておくことで、移行における空白期間を埋める形で自らが開発したアプリを浸透させることができたのだ。

作戦の要となったのは、ファントム・セキュアを闇社会に広めた一人の情報提供者だった。FBIが公開した情報によると、この情報提供者は新型の暗号化デバイスの開発にも関わっていたようだ。彼は、AnomというデバイスをFBIに提供する一方で、闇社会にも普及させた。FBIはこの情報提供者に対価として、1300万ドルの報酬と生活費、移動費などの支払いに加え、刑期を短縮するチャンスを与えた。なおこの情報提供者についての詳細は明かされていない。

Anomというデバイスにはたった一つしかアプリがインストールされていない。"計算機"として偽装されている暗号化メッセンジャーだ。オーストラリア連邦警察と協力し、FBIとその情報提供者は、Anomを使用して送られたそれぞれの暗号化メッセージを、ユーザーに気づかれずに解読するマスターキーを製作した。ユーザーが送信したメッセージはまるでEメールのbccのように、第三国のサーバーに暗号化を解いた状態で同時に送信、さらにFBIによって暗号化され、捜査局に共有される。

Translated by Kazuhiro Ouchi

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