ダニー・エルフマンが語るロックと映画音楽、ディストピア的世界観とノイバウテンへの共感

 
ヘヴィでダークな音楽への愛情

―オインゴ・ボインゴ時代と較べて、あなたのヴォーカル・スタイルはどのように変化しましたか?

ダニー:80年代、オインゴ・ボインゴ時代にはすごく高い音域で歌っていた。ツアー中は毎晩、ショーの終わりになると声がかすれていた。それから長いあいだ、ヴォーカルを取っていなかったんだ。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』コンサートで「ジャック・スケリントン」を歌ったりはしたけど、あれはかなり異なった歌い方だしね。だから今回自分で歌うにあたって、「どういう風に歌うんだっけ?」と、自分のヴォーカル・スタイルを再確認する必要があった。「True」をレコーディングするあたりから、そんな作業をすごく楽しむようになったよ。オインゴ・ボインゴ時代にはあれほど生々しい歌い方は出来なかった。現在の私の声帯は、かつての私の“楽器”とは異なるものだよ。




―『Big Mess』のレコーディング・メンバーはどのようにして選びましたか?

ダニー:最初に参加が決まったのはドラマーのジョシュ・フリーズだった。彼はセッション・ドラマーとして有名だけど、私とも何本かの映画音楽で共演したことがあった。ベーシストは当初クリス・チェイニーに声をかけたんだけど、ジェーンズ・アディクションとのツアーで忙しいというんで、代わりにスチュ・ブルックスを推薦してもらった。

―ジョシュ・フリーズとギタリストのロビン・フィンクは、共にナイン・インチ・ネイルズやガンズ・アンド・ローゼズに在籍したことがありますね。

ダニー:うん、誰がロビンを紹介してくれたのか覚えていないけど、彼が素晴らしいギタリストだということは知っていたし、会ってすぐに意気投合した。当初リズム・ギタリストは入れないつもりだったし、ロビンも「要らないんじゃない?」という感じだったけど、私のアシスタントがニリ・ブロッシュという女性ギタリストを勧めてきたんだ。彼女とオーディションして、その後ロビンに「どう思う?」と訊いたら、「いいね!」と言ってきた。それで彼女に入ってもらうことにして、バンドが完成したわけだ。

―ジョシュやロビンの参加、また「Kick Me」をデス・グリップスのザック・ヒルがリミックスするなど、ヘヴィな音楽性のミュージシャンとの交流がありますが、彼らの音楽は普段から聴いているのですか?

ダニー:うん、ナイン・インチ・ネイルズやトゥールの音楽は好きだし、プライベートでも聴いている。自宅待機中に、35年間ずっとやりかけだった刺青を完成させたんだけど、トゥールの『フィアー・イノキュラム』がなかったら完成させられなかっただろうね。あのアルバムは2019年のベスト・アルバムだったし、私の心の拠り所だったよ。だから世間の人たちが考える以上にヘヴィな音楽を聴いているかも知れない。80年代と較べると、よりヘヴィでダークな音楽に惹かれるようになったね。



Photo by Credit Jacob

―お気に入りのアーティストで、他に意外と言われそうな人はいますか?

ダニー:アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンが大好きなんだ。こないだ友達と話していたよ。「80年代にノイバウテンを聴いていなくて良かった。きっと影響されてしまって、オインゴ・ボインゴは存在しなかっただろうから」ってね(笑)。私はパーカッションが大好きなんだ。パーカッションを自作したりもする。オインゴ・ボインゴの前、ミスティック・ナイツというバンドをやっていたけど、自作パーカッションのメンバーが何人もいたんだよ。だから初めてノイバウテンを聴いたとき、かつて自分がやろうとしたことをよりラディカルな形で実現させていると感じたんだ。


 
 
 
 

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