DMXよ永遠に スウィズ・ビーツが語る『Exodus』制作舞台裏 

スウィズとDMX 2016年ニューヨークにて(Photo by Johnny Nunez/WireImage)

今年の4月に急逝したラッパーのDMX。彼の盟友でありプロデューサーのスウィズ・ビーツは、DMXの遺作となったアルバム『Exodus』をたった一人で完成させなければならなかった。

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2020年3月、ニューヨークがロックダウンへ向かいつつあったころ、DMXはRV車に乗り込んで南を目指した。最初の4カ月はナッシュビル郊外の農場に滞在し、その後ロサンゼルスへ足を延ばした。音楽界に残した自らのレガシーを対決バトルVerzuzで称えるため、そしてのちに遺作となる『Exodus』を収録するために。

このアルバムはDMXとスウィズ・ビーツが長らく温めていたものだ。2人は20年にわたってヨンカーズ出身のラッパーの最高傑作をいくつか生み出してきたが、ロサンゼルスでともに過ごした時期は、1998年にリリースしたDMXの歴史的第2作『フレッシュ・オブ・マイ・フレッシュ、ブラッド・オブ・マイ・ブラッド』以来の一大共同プロジェクトだった、とスウィズ・ビーツは言う。スヌープ・ドッグのイングルウッド・スタジオで、『Verzuz』の際に世界中から寄せられたDMX愛にインスパイアされ、2人はラッパー最期の楽曲のレコーディングに取りかかった。

『Exodus』はこれまでのDMX作品の中でもとくにフィーチャリング満載なアルバムだ。「Money Money Money」のMoneybagg Yoのヴァースを除けば、ゲスト出演の大半は彼の生前に収録を終えていた。同世代のアーティスト――The Lox、ジェイ・Z、リル・ウェイン、スヌープ・ドッグ、ナズ――と向こうを張るDMX、Griselda Recordsのメンツをはじめ明らかに彼の影響を受けた最近のラッパーたちからもてはやされるDMX。おなじみのしゃがれ声は、ボノやアリシア・キーズやアッシャーの伸びやかな歌声とうまくバランスが取れている。おそらくもっとも重要なのは、アルバムタイトルの由来にもなった彼の息子の声だろう。アルバムの終盤で、息子は父親と一緒に歌い、はしゃぎ声をあげている。





ニューアルバムに活気づけられながらも、DMXは疲れていた。おそらくこのアルバムが最後になるだろう、とスウィズに語った。4月9日にDMXがこの世を去ると、スウィズの前にはアルバム完成という難問が残された。手を加え、編集し、順番を入れ替えて、亡きラッパーのレガシーを称える10曲のまとまったアルバムに仕上げるのだ。スウィズ本人もこのインタビューで語っているように、その行程は胸に重くのしかかるような作業だった。

Translated by Akiko Kato

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