ブラーのデーモン・アルバーンが語る、トニー・アレンとアフリカ音楽から学んだこと

トニー・アレンとデーモン・アルバーン(Photo by Stars Redmond)


異なるカルチャーを通じて学ぶべきこと

―トニーと固い絆が生まれたと実感したのはいつ頃でした?

デーモン:そうだな、初めてコラボした時のエピソードを聞いてもらうのがいいのかもしれない。僕は彼のアルバム『HomeCooking』(2002年)で『Every Season』という曲に参加したんだけど、フランスのテレビ番組でライヴで演奏することになって、ものすごく興奮していた。その一方で、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのイブラヒム・フェレールともコラボをしたばかりで(筆者注:彼は2001年発表のゴリラズの1st『Gorillaz』収録の「Latin Simone」にフィーチャーされている)、同じ番組にブエナ・ビスタも出演することが分かって、僕は両方のパフォーマンスでプレイすることになったんだよ。

で、まずはブエナ・ビスタのパフォーマンスが終わってステージを転換している時に、番組の司会者だったレイ・コークスっていうヤツから、マルティニーク産のホワイト・ラムのボトルを渡されて、愚かにも吞み始めちゃったのさ。あまりにもハッピーだったからね。これが大失敗で、次にトニーのパフォーマンスが始まる頃には完全に酔っ払っていて、カンパイバンザイゲットハイ!だ(笑)。当時の僕はまだアフリカのミュージシャンと共演するにはあまりにも未熟で、ポリリズムを理解し切れていなかったし、ダウンビートが掴めなくて、どこで歌い始めていいのか分からない。そのまま演奏だけが続いて、どういうわけか僕はドラムを叩いているトニーの後ろに座り込んで、彼を背後から抱きしめて、寝ちゃったんだ(笑)。その後の記憶は全く無い。翌朝ツアー・マネージャーに起こされて、眠気まなこで「昨夜は最高だったね!」と言ったら、彼が険しい表情で一部始終を説明してくれた。もちろんすぐにトニーに電話して謝ったんだけど、優しく「大丈夫だよ」と言ってくれたんだよね。あの瞬間、彼は僕の親友になった(笑)。なんて素敵な人だろうって思う。とにかくラヴリーな人なんだよ。








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―アフリカ・エクスプレスにもトニーは度々参加していましたが……。

デーモン:うん。計り知れない貢献をしてくれたよ。

―あのプロジェクトを通じて、欧米社会におけるアフリカの音楽への理解や認識について、どんなことを学びましたか?

デーモン:そうだな、昔は本当にひどかったから、もちろん理解は進んでいて状況は改善されつつあるけど、アフリカの音楽はものすごく長い間“ワールドミュージック”と括られてきた。この枠そのものが、大きな問題を孕んでいたと思うよ。僕は昔から、欧米圏外の音楽から学ぶべきことは限りなくたくさんあると感じていたし、自分が属するカルチャーの音楽から学べることってそんな多くないと思うんだ。それは、欧米の音楽に価値がないという意味じゃない。異文化のヴァイブレーションに周波数を合わせた時にこそ、自分が何者なのか、より大局的に捉えることができるんだよ。僕らはひとりひとりが独立した個人で、それぞれが己の人間性を定めるのだという考えは間違っている。みんな、この地球上に張り巡らされた巨大な有機体の一部分を形成していて、誰もがお互いに依存して生きている。お互いを尊重し、お互いの考えに耳を傾けなければいけないんだよ。

―ところで、数年前にとある雑誌の記事でトニーは、“お気に入りのデーモン・アルバーンの曲”として、ゴリラズの「On Melancholy Hill」とロケット・ジュース~の「Poison」を選んでいました。つまりあなた特有の、悲しみや憂いを含んだ美しいメロディに惹かれていたことを意味していますよね。

デーモン:うんうん、僕もそれなりにトニーに評価してもらえていたのさ(笑)。だからこそコラボしてきたわけだし、彼とプレイすることで本当に多くを学んだよ。ザ・グッド~とロケット・ジュース~では、トニーのやり方に自分を順応させる必要があった。絶対に自分のビートを変えないから、彼のビートに合わせて曲を作って、プレイしなくちゃいけなかったんだよ。でもそれって素晴らしいことだし、常に何かしらチャレンジを突きつけられた。たまにトニーのドラムを録音してループし、それを練習に使ったりもしたっけ。彼がドラムで伝えようとしていることにちゃんと耳を傾けて、心を寄り添わせてプレイするのは容易じゃない。ハイハット、スネア、バスドラム、それぞれのパターンが、トニーのオーケストラの中で担っている役割を識別しないといけない。マジな話、彼のドラムを聴いているだけで、どんどん曲が生まれるんだよ。終わりがないんだ。無限の可能性がある。それがトニーの神髄だと思う。トニー・アレンとは無限かつ不滅の可能性、だね。それがつまり「Cosmosis」の意味なんだよ。

【関連記事】追悼トニー・アレン、アフロビート・ドラミングを生み出した男


ロケット・ジュース~「Poison」を一緒に演奏するトニー・アレンとデーモン




トニー・アレン
『There Is No End』
2021年6月2日発売
視聴・購入:https://tony-allen.lnk.to/ThereIsNoEnd

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