セイレム・イリースが語る、次世代スターの作曲術とポップミュージックの未来

セイレム・イリース(Courtesy of Virgin Music Label & Artist Services)

バイラルヒット「Mad at Disney」でポップ界に新風を吹き込んだセイレム・イリース(Salme Ilese)。「ディズニーに怒ってるの!」と高らかに歌ったシンガーを一発屋だと思っていた人は、ニューEP『(L)only Child』でその考えを改めることになりそうだ。ウィットに富んだリリックと、清涼飲料水のように爽やかな歌声、ポップンセンスが凝縮されたサウンド。次期ポップスターの要素を全て兼ね備える彼女に、新作のインスピレーションやソングライティングへの拘り、現行ポップシーンに対する見解などを伺った。

ー「Mad at Disney」や「Coke & Mentos」などのヒット曲でセイレムを知った人は多いと思うのですが、このニューEP『(L)only Child』に対しては、どういうリアクションが得られそうですか?

セイレム:プロダクションに関しては少しダークなところもあって、驚く人がいるかもしれない。でも変わらないのが、私のリリック面における拘りで、言葉の綴り方やコンセプトなど、すごく私らしいスタイルじゃないかと思っている。私って少し”言葉オタ”みたいなとろこがあって、とにかくいつも言葉のことばかり考えている。韻を踏んだり、あれこれ綴りで遊んでみたり。パズルみたいに、ひとりで長時間考え込んでいる(笑)。じつはそのプロセスが曲作りの中で一番好きなところだったりするのだけれど。

ーパートナーのベンディック(・ムラー)とは、どんなふうに共作を?

セイレム:演奏に関しては、ほぼ全て彼が担当している。私がピアノやウクレレを弾いて作曲していると、彼がギターやベースを持ち出して、曲の途中などでも合わせて演奏してくれる。もう3年くらい一緒に活動しているから、ほとんど以心伝心ね。言わなくても分かるし、2人の音楽嗜好も似通っている。もちろんぶつかることもあるけれど、最悪の喧嘩が曲作りってことは、ある意味救われているのかも(笑)。



ータイトルトラック「(L)only Child」は、セイレムの実体験から生まれた曲だそうですが、一人っ子だった影響が大きかったと?

セイレム:ええ、そうだと思う。一人っ子だったのは、私の性格に大きく影響しているし、私という人間を「だからそうなんだ!」と上手く説明できたりする。この曲のリリックにもある通り、両親とはすごく親しいし、父や母とは他の誰よりも頻繁にメッセージのやりとりしているほど。あと私がルームメイトとして最高ではなかったというのも事実かな(笑)。同居していた友達とは、いまでも友人だけど、そうとう我慢してくれたはず。一人っ子だと、食器の後片付けや掃除などがね……もちろん私も努力はしたけれど。

ー親元を離れたのはボストンのバークリー音楽院に入学するために?

セイレム:そうなの。あの頃は、そうとう辛かった。両親からあんなに遠く離れたことはそれまでなかったし、一人暮らしをしたこともなかったから苦労したのは確か。でも、おかげで自立できたと思うし、自分自身についていろいろと知ることができた。あの2年があったから、アーティストとして、ミュージシャンとして心構えをすることができた。

ー当時はどういうアーティストを目指していましたか?

セイレム:ノラ・ジョーンズのようなシンガーソングライターになれたらと考えていた。入学してオープンマイクのステージに立ったときは、ピアノを弾きながらバラードを歌っていた。でも、そこでベンディックをはじめ音楽プロデュースを手掛ける人たちと出会ったの。それまでアコースティック楽器しか演奏したことがなかった私は、電子音楽に開眼した。デモ制作の授業を取ったり、LogicやProToolsなどエレクトロニックな機材について学んだり。バンド活動を通してはライブのノウハウも身に付けた。そうした中で、私が目指しているのはポップアーティストだと次第に確信していった。進むべき道はバラードシンガーではなく、ポップシンガーなんだって(笑)。

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