大槻ケンヂ×眉村ちあき 吉田豪と語る「楽しそうな時代」と「コロナ禍の日々」

二人の音楽、実は似ている?

―そろそろ本題に入ります! 眉村さんは特撮の新譜『エレクトリック ジェリーフィッシュ』聴いたんですよね?

眉村:聴きました! こういうの初めてやるんです。

―新譜を出した人との対談が初めてってこと?

眉村:はい。「大槻さんのやらない?」って言われて、やりたい!って。アルバムもみんなより先に聴けて嬉しかったです。何回も聴きました。

大槻:ありがとうございます。嬉しいなあ。



眉村:ちょー楽しかった! 立ちながら踊りました。アルバムの中で私が好きなのは、「歌劇「空飛ぶゾルバ」より「夢」」。度肝を抜かれました。爆発するような気持ちになって、立ち上がって、とんでもない曲が現れました!って叫びました。すごく幸せでしたね。

大槻:あれ、いい歌ですよね。感動しますよね。「歌劇「空飛ぶゾルバ」より「夢」」は、8分間の中で沢山展開していく曲で。最初、うちのメンバーのNARASAKIが曲を作ってきたときは1分くらいしかなかったんですよ。シンプルなパンクだったから1曲くらいこういうのあってもいいねって話してたのに、翌日、この曲展開しますって8分間になってて。

眉村:めっちゃすごいなあ。

大槻:ああいうロックミュージカルって、ちあきさんは作ったことないでしょ?

眉村:ないです。

大槻:昔、夏の魔物に8展開する7、8分ある曲の歌詞を作ったことがあるんだけど、ものすごい大変で。しかも、作り終わったら魔物が解散しちゃったんだよね。

―ろくに披露することもなく(笑)。

大槻:そうなんだよ。僕、CD化されたのかもよく分からないんだよ。

眉村:でも展開を作るのって大変ですよね。例えば3展開するなら、3曲作るくらいの時間がかかる。だから8展開作るなら、8曲作るくらいカロリー使うんだろうなって。

大槻:曲調が変わると、ウェスタンになったら西部劇調にしたらいいのかなみたいに世界漫遊みたいにするしかないのよね。

眉村:やりたい! 私もいっぱい展開する曲作ってみたいです! あと、なんだこのタイトルは!と思ったのが「フィギュア化したいぜ」。タイトルが面白いなと思って聴いていたら感動しました。

大槻:「フィギュア化したいぜ」っていう曲は、最初「ソフビ化したいぜ」っていうタイトルだったんだけど、“立ち上がる姿を”って歌詞があって。ソフビに立ち上がる姿はないけど、フィギュアならあるなってことでタイトルを変えたの。僕も眉村さんの曲をSpotifyで聞いてきましたよ。ダースベイダーのがすごかった。

眉村:うわー! 初期のやつですね(「トコロトコロピピリウス」)。


特撮の最新アーティスト写真

―大槻さんは眉村さんの曲にどんな印象がありますか?

大槻:僕は改めて、トゥーマッチに天才だなと思いましたよ。素晴らしいです。

―それは音楽面でも歌詞でも?

大槻:すべてが。逆に世界が眉村さんを受け入れられる状況はいつ来るだろうって思っちゃうね。相当エッジの効いた、ニッチな層に向かっている感じもするんだけど、それがワールドワイドに聴かれるのもすぐなんじゃないかなって。

眉村:嬉しい。大槻さんのアルバム、一瞬私の匂いがしたんです。似ているかもって。

―どの辺に感じたんですか?

眉村:歌詞が1番感じたけど、曲の展開とかにも感じました。あと振り幅というか。

―特撮の新譜だと、「果しなき流れの果へ」の “子供じゃねえんだ赤ちゃんなんだと開き直って”という歌詞に眉村さんっぽさを感じましたね。

大槻:バブみがね。

眉村:あと、「ウクライナー」の歌詞もいいなって思いました。1000人斬りと言われた男が、ちょうど1000人目に斬られるという。

大槻:僕、都市伝説的に「1000人斬りの男」と言われていたんですよ。豪ちゃんが昭和の大物たちの武勇伝を語るインタビューが好きで読んでいたとき、自分もいっぱい武勇伝を語ったら夢を持ってもらえるだろうと思って大袈裟なこと言ってたんです。そしたらネットの時代になって、みんなそれを真面目に受け取って顰蹙を買うようになっちゃって。逆に1000人斬りの男が悪名になっちゃってるから、これはセルフパロディなんです。

―大槻さんやみうらじゅんさんは敢えてそういう下半身方面の武勇伝を語ってたのに、みんな額面通りに受け取ってしまう。

大槻:そうそう。ちゃんとしたことしか伝わらない時代になっちゃったからね。

眉村:ラジオの取材とかで、嘘しか言わないバンドマンがいたって話を聞いたことがあります。掟(ポルシェ)さんか誰かに聞いたのかな。「嘘しか言わないけどどれが冗談なんだろう、ハハハ!」みたいな時代があったんだなんて羨ましい。

―でも、眉村さんも一時期ラジオで嘘ばっかり言ってましたよね。

眉村:オーストラリア生まれです、と言ったりとか(笑)。あとは曲振りする時に全然違うタイトルを言って、ラジオブースの人たちを困らせちゃいました。

大槻:そういうので怒られちゃった?

眉村:怒られたわけじゃないけど、アワアワさせちゃって申し訳ないから、最近はやめようと思って。だから羨ましいです、何でもかんでも適当に喋れて鵜呑みにされなかった時代が。

―大槻さんは色々なものを膨らませて話しすぎだって、よくバンドメンバーに怒られてましたね。

大槻:うん。梶原一騎さんの話の広げ方を見て育ったので、話は一を百くらいにして話さないと喜んでもらえないと思ってたんだけど、みんな意外とちゃんと普通に喋るから驚いた。「え、そうなの!」って(笑)。

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