高田渡はなぜカメラに惹かれたのか? 高田漣と共に振り返る



田家:2015年の高田渡さんの曲を集めたカバーアルバムのタイトルを『コーヒーブルース』にした理由はあったんですか?

高田:高田渡という人柄が一番素で出ている時期の曲なのかなと思って。晩年の父の姿を覚えていらっしゃる方は、いつも酒を飲んで管を巻いている人というイメージがあると思うんですが、京都時代の高田渡はお酒も飲まずシャイな若者の雰囲気が一番出ていて。本人が自分の詩集にも残したぐらい詩も気に入っていたようですし、高田渡を表現するのに一番いい曲かなと思いましたね。

田家:今月はこの曲を前テーマにして、今日もこの曲で始めている理由がもう一つありまして。この写真集の帯を作詞家の松本隆さんが書かれている。元はっぴいえんどのドラマーで今京都在住ですが、この『コーヒーブルース』の中の三条イノダは今も京都にある喫茶店ですもんね。

高田:そうですね。元気にやっていらっしゃることを祈っております。

田家:この帯がどんな帯なのか、読んでみましょう。高田渡さんと松本さんのやりとりになってます。高田さんの言葉に松本さんが答える形になってます。「やあ、松本くん。今度京都案内するよ。待ち合わせは三条堺町のイノダで。古書店とか純喫茶の話を梯子しながら、君の好きな詩の話をしよう。あれから長い時間が流れたね。次は天国を案内するよ」。ここまでは高田渡さんの言葉です。この後「渡さん、それはもう少し待ってね。そのうち遊びに行くから」という松本さんの言葉で締め括られております。短い行数の中で、高田渡さんが呼びかけてそれに松本さんが答える。高田渡さんがこんなことを言っているんだろうな、と松本さんが思ったのは、写真があったからかもしれないですね。

高田:松本さんらしいというか。ストーリーを感じる文章ですね。

田家:写真集は、渡さんが色々なことを語りかけてくれているような写真ですね。

高田:そうですね。これは佐野史郎さんにも言われたんですが、高田渡の歌っていうのはともするとちょっと難解で不親切なところがあるから、どんなことを歌っているのかこちら側が計り知れないこともたくさんあったと思うんです。写真の表現における高田渡ってすごくピュアで、ダイレクトで分かりやすい。おそらく歌で歌っていたのはこういうことなんだろうなというのが分かりやすく表現されていて、写真を見ていると父の歌の言葉の意味がより伝わってくる気がしていましたね。

田家:1972年から1979年までの写真ですが、項目別に章立てがされておりまして。ヨーロッパ、京都、仲間たち、吉祥寺、春一番、旅芸人、スタジオ、駅など、色々なキーワードがあって写真が構成されている。これは編集者の方と話し合いながら作られたんですか?

高田:最初はある程度場所や土地に即して選んでいたんですけど、最初に見ている時点で土地とか年代とか関係なくアングルがあるなと思っていて。ある程度まとめつつも、パリの街角から吉祥寺の街角、バルセロナの飲み屋があるような作りにできたらなと思って。後半に進むにつれて、より高田渡くさい写真が現れるような構成になっていますね。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE