ニルヴァーナやジミヘンの「新曲」を制作、AIプロジェクトの真意とは?

AIの曲を歌うボーカル探し

ひとたび曲が出来上がると、音楽スタジオが各パートをアレンジして、ミュージシャンをよみがえらせた。「楽器のパートはほとんど、様々なエフェクトを加えたMIDIです」 完成した楽曲について、オコナー氏はこう語った。そのあとボーカル探しに取り掛かった。「たいていの場合、僕らが起用した人はみなトリビュートバンドで活動していましたから、抑揚をつけるとかして、可能な限り本物らしく歌うことができました」

エリック・ホーガンは、アトランタのトリビュートバンドNevermind: The Ultimate Tribute to Nirvanaで6年間フロントマンを務めている。はじめは一夜限りのハロウィンの余興のつもりで、ホーガンが友人とフー・ファイターズやストーン・テンプル・パイロッツやニルヴァーナを演奏する口実に過ぎなかった。だがニルヴァーナのステージが大反響を呼んだのをみて、グランジ1本でやることにした。Over the Bridgeのチームから「Drowned in the Sun」のボーカルを頼まれたとき、彼は(まさに文字通りの意味で)信じられないがクールなプロジェクトだと思った。「言葉を交わした後も、現実のこととは思えなかったよ」と本人。「そしたら、ファイルとギャラが送られてきたんだ」

最初に曲を聴いたとき、彼は驚きで言葉を失った。「これをどう(歌い)こなせっていうんだ、と思ったよ」と彼は振り返る。「AIの曲を作った人間に(曲を)鼻歌で歌ってもらわなくちゃいけなかった。(コバーンだったら)どんな感じにしただろう、と想像するのは変な感じがしたね。ちょっとばかり方向性を示してもらわなくちゃならなかったが、そこから先は順調だった」


ドアーズ風の「The Roads Are Alive」


ジミ・ヘンドリックス風の「You’re Got Kill Me」

オコナー氏とスタッフはリサーチと曲作りに1年を費やし、さらに半年かけて収録した。その過程で各アーティストに精通したキモ入りのファンを探し出し、盗作の恐れがないか調べるのを手伝ってもらった。ドアーズ風に作った「The Roads Are Alive」が、実際にドアーズが作曲した「ピース・フロッグ」と瓜二つではないか、と懸念したが、最終的には別物だと判断した。「スタジオエンジニアが『ピース・フロッグ』を実際に演奏してくれました」とオコナー氏。「『ピース・フロッグ』はこう、この曲はこうとやってくれて、たしかに違う、OKこれなら安心だ、となりました」

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE