「テイラーを聴いて育った世代」ならではのアプローチこの曲で描かれているのは、運転免許を取ったばかりの主人公(オリヴィアも2020年夏に免許取得)が一人で郊外まで車を飛ばし、免許取得を一緒に楽しみにしていたはずのボーイフレンドが今はもう隣にいないことを嘆く様子。特に注目されたのは、「あのブロンドの女の子と一緒なんだろうな」「彼女は私よりずっと年上」と元カレの浮気を臭わせる描写で、すぐさまファンの間で考察が過熱した。なにしろ、オリヴィアは『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』の共演者ジョシュア・バセットと交際の噂があり、ジョシュアはオリヴィアより「4歳年上」で「ブロンド」のディズニー女優サブリナ・カーペンターと一緒にいる姿が目撃されていたのだから。
リリックの中に交際相手やその浮気相手、もしくは不仲を噂される人物などについての思わせぶりな描写を織り込み、リスナーのワイドショー的な好奇心を掻き立てて耳目を集めるという手法は、2010年代のテイラーがもっとも得意としたスタイル。Z世代は「テイラーを聴いて育った世代」とも言えるわけだが、デビュー曲の時点で当たり前のようにテイラーの作詞術を前提に踏まえ、それを非常に高い完成度でやってみせるオリヴィアは、やはり新世代的というべきだろう。
また、The Guardianで
ローラ・スネイプスが指摘するように、この曲は2010年代の女性シンガーのヒット曲に多く見られたエンパワーメント的な要素が希薄で、むしろ主人公が出口の見えない悲しみに浸っているというのも注目すべき点だろう。これは、見方によっては「保守的」で「反動的」と捉えることもできる。だが同時に、幼い頃から政治的混乱、気候変動、経済不況、そして終わりの見えないパンデミックを経験し続けているZ世代にとって、「出口なき悲しみ」は自らのリアルな皮膚感覚を表現した結果ということもできるはずだ。
2010年代ポップにおける最良の成果のひとつを継承しながらも、新世代的な感覚でそれを更新したオリヴィア・ロドリゴは、2020年代の新たなアイコンと呼ぶにふさわしい。
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