österreich初ワンマン、高橋國光が戦友たちと提示した「新たなポップスのスタンダード」

高橋國光(Photo by Kana Tarumi)


佐藤と鎌野によるピアノの連弾と、須原のヴァイオリンによるポストクラシカルなインスト「外科室」に続いては、この日のもう一人のゲストであるTHE NOVEMBERSの小林祐介が登場し、『四肢』のCD盤に収録されている「ずっととおくえ」を披露。THE NOVEMBERSは長く日本のオルタナティブなバンドシーンをリードし、今も新たな領域に挑み続ける開拓者であって、小林を自身の楽曲に迎えたことは、高橋にとってとても大きな意味があったはず。この曲は音源だと打ち込みだが、この日はバンドアレンジで演奏され、ヴァイオリンのピチカートをアクセントに、マーチングのリズムを用いることで、新たな命が吹き込まれていた。そしてやはり、小林の色気を感じさせるボーカルが実に素晴らしかった。


小林祐介(Photo by Kana Tarumi)

ライブ後半では飯田が満を持してメインボーカルを務め、歪んだギターをフィーチャーしたオルタナ寄りの作風がcinema staffにも通じる「swandivemori」から、鎌野とのツインボーカルによる「動物寓意譚」を続け、この曲のラストの2人の掛け合いは何度聴いても琴線を揺さぶられる。そして、本編の締め括りとして披露されたのは、飯田が初めてösterreichに参加した曲でもある「楽園の君」。この曲のアレンジも一筋縄ではいかないが、圧倒的な歌とメロディーの力が楽曲を引っ張っている。アウトロでは全員の演奏が熱を帯びる中、高橋は気づけば眼鏡がどこかに飛んでいて、口の中に指を突っ込む不穏なアクションを交えながら、がむしゃらにギターをかき鳴らしている。カメラはメンバーを均等に映し出していて、特別高橋にフォーカスが当てられていたわけではないが、やはりスイッチが入ったときの高橋のステージングはösterreichのライブの大きな見せ場。最後はステージ上に置かれたギターからフィードバックノイズが垂れ流される中、本編が終了した。


高橋國光(Photo by Kana Tarumi)


Photo by Kana Tarumi

アンコールではまず高橋が姿を現し、普段はやらないメンバー紹介をすると言って、「今日の出来が悪かった順に呼びます」と話すと、バックステージからゲラゲラと笑い声が聞こえてくる。高橋、三島、飯田、鎌野はもともとレーベルメイトであり、他のメンバーも含めてそれぞれが活動をともにしている7人は、もはやすっかり「バンド」であることがその雰囲気から伝わってくる。そして、小林を除く出演者がステージに立ち、この日初めての明るい照明の下、全員黒の衣装で並んでいる姿を見ると、たとえメインストリームのど真ん中ではなかったとしても、オルタナティブな感性を突き詰め、時代の波と対峙してきた戦友たちが、時を経て高橋のもとに集ったのだということも、はっきりと伝わってきた。

そんな彼らがアンコールで披露したのは、Mr.Childrenの「and I love you」。意外な選曲だと感じる人もいるかもれないが、高橋は昨年行ったRolling Stone Japanのインタビューで普遍的なポップスへの憧れを語り、その象徴としてMr.Childrenの名前を挙げていたように、この選曲は高橋にとってのどストレートである。そして、オルタナやポストロックの系譜に連なりながら、閉じることなく、緻密に構築されたポップスをマスに向けて作ってきたのがösterreichの世代だとしたら、彼らから直接的にも間接的にも影響を受けたボカロ以降の世代が台頭し、変拍子や転調が複雑に盛り込まれた楽曲がこの国のメインストリームの一端を担うようになった今、もはやösterreichの楽曲に「アヴァン」という形容詞は必要ないようにも思う。最後に「またどこかで」と一言残してステージを去った高橋が、いつか仲間とともに新たなポップスのスタンダードを生み出すことを期待したい。

【関連記事】österreichが遂に本格始動、新作『四肢』全曲解説&制作を語り尽くす


Photo by Kana Tarumi



〈セットリスト〉
1.映画
2.贅沢な骨
3.きみを連れてゆく
4.Question
5.caes
6.無能
7.外科室
8.ずっととおくえ
9.swandivemori
10.動物寓意譚
11.楽園の君
en. and I love you (Mr.Children)


2021年5月23日(日)
「österreich presents 四肢の文脈」アーカイブ配信
OEPN 17:45/START 18:00
Ticket(Zaiko) : 2,800yen
アーカイブ(JST): ~5/26 23:59 まで ※予定
詳細:https://perfectmusic.zaiko.io/_item/339946


österreich
『四肢』
発売中
配信リンク:https://linkco.re/RYFzPuQc
購入リンク:https://recomall.theshop.jp/categories/1448839

【ライブ情報】
「österreich presents 序文」 
2021年5月23日(日)
大阪・心斎橋Live House Anima
※2020年6月14日(日)/2021年2月21日(日)の振替対応公演
第1部 OPEN 14:30/START 15:00
第2部 OPEN 17:30/START 18:00
ローソン   https://l-tike.com/search/?lcd=52840 (Lコード:52840)
イープラス  https://eplus.jp/osterreich/
チケットぴあ https://w.pia.jp/t/osterreich-o/ (Pコード:185-630)

cinema staff TOUR 2021 NEWDAWN/NEWBORN
Special Guest:österreich
2021年6月4日(金)
東京・恵比寿LIQUIDROOM
開場/開演:18:30/19:00
詳細:https://osterreich.jp/contents/421752

österreich公式サイト:https://osterreich.jp/

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