Tempalayが語る、進化するビジョン「人類よ、いざ化けろ」

Tempalay:左からAAAMYYY(Cho, Syn)、 John Natsuki(Dr)、小原綾斗(Vo, Gt)(Photo by Genki Ito for Rolling Stone Japan)



自然界と人間の境界線。「化けろ」の真意

ーアルバムタイトルの「ゴースト」には、どんな意味が込められていますか?

小原 単純に、生きているか死んでいるか分からないような1年だったというのもあるし、「死んだ気になって踊ろうよ」という意味もある。ゴーストのような、目に見えないものについて描きたいという気持ちもありました。「ゲゲゲ」でも歌っていることですが、僕らの知らないところで大変な思いをしている人、もう亡くなってしまった人はたくさんいると思うんですよね。未だに怒りを抱えている人も、順応していく人もいる。だったらもう、みんないっそ「化けて」しまえよと。

【画像を見る】Tempalayが『ゴーストアルバム』制作中に刺激を受けた作品

ー「ゲゲゲ」には、“おいも若きも世のため人のため 化けろ化けろ化けらにゃ損損”というラインもありますね。

小原 「ゴースト」って一般的にはネガティブなイメージですが、なってしまえばこっちのものだと思いませんか? みんな、不安で分からないから怖いし、怖いから憤りを持つと思うんですよ。何が不安なのかもよく分からないけど、でもなんか不安なんです。だったら「死んじゃえよ」っていうアルバムですね、これは。



ー(笑)。

小原 死は「向こう側」というけど、それはどっち側に立つかだけの話で。自然界と人間界の「間」とも言えるのかなって。そういうことをこの1年でたくさん考えました。

ー「生と死」だったり、「自然と文明」だったり、ある意味「境界線」とも言えますね。以前、綾斗さんにインタビューしたとき、「死」に取り憑かれるようになった幼少期の体験について話してくれましたが、今作はそこに焦点を当てたアルバムともいえますか?

小原 かもしれないですね。なぜなら「死」に対して、どうしたって向き合わなければならなくなってしまった1年だったわけじゃないですか。やっぱり今まではどこか他人事だったと思うんですよ。どこかの国で紛争や災害が起きても責任を負えないし、BLMにしてもそう。でもコロナに関しては、全員が向き合わなければならなくなってしまった。他人より自分と向き合わざるを得ない事態となり、みんなこの1年で自分のことを知ったんじゃないですかね。僕も、自分に降りかかってくる問題じゃないと歌えないし、自分のこととして発言できないなと再認識しました。

ー「春山淡冶にして笑うが如く」と「冬山惨淡として睡るが如し」は、曲名が山水画家・郭煕の俳句から引用したものですが、どういったインスピレーションを受けたのでしょう?

小原 郭熙はまさしく、自然と人間界の「間」をアルバム1枚通して表現したいと思ったときに、インスパイアされたアーティストの一人です。彼の描く山の絵は、ものすごくデフォルメされているんですよ。「その位置で山を見たら、そんなふうには見えないだろ?」っていうくらい。それって郭熙の心象であり「存在しない山」なわけだけど、でも彼にはそう見えたのかなと思うと面白いですよね。



ー同じ山でも、人によって見え方は当然違うわけですしね。

小原 しかも、ひたすら山を描き続けて生涯を終えるというのも、すごく憧れる。『ゴーストアルバム』のアートワークを手がけてくれたジョージ3さんも、かれこれ30年くらいマジカル・アイを毎晩朝まで描いているらしいんですよ。その創作意欲って一体どこから来ているんだろう、なぜそこまでマジカル・アイに取り憑かれたんだろうと思うし、そういうエネルギーを作品から感じるのは楽しいことでもありますね。

ーサウンド面に耳を向けると、「大東京万博」あたりから内包されていた「オリエンタリズム」が、今回のアルバムにもふんだんに入っています。

小原 結構それ、いろんな人に言われるんですけど、自分ではあんまり意識していなくて、使いたい楽器を重ねていった結果なんですよね。ただ、この1年間いろんなところを旅してみて、行く先々で目にした自然の姿、コロナとは全く関係なく存在しているその様子に驚愕したというか。これだけ世界中が大騒ぎになっているのに、もう全く無関係にそこにあるもの。それを目にしたときに、自然界と人間界の「間」にあるものを作品にしたいと思うようになって。それを追求していくうちにオリエンタルなサウンドになったのかも知れないですね。

ー「自分が使いたい楽器を重ねていった」とおっしゃいましたが、たとえばどんな楽器を入れたのですか?

小原 二胡とか。僕、二胡がめっちゃ好きなんですよ。二胡だけじゃなく、アジアの楽器全般に興味がある。なんか高揚するんですよね。ノスタルジックな気持ちにも、センチメンタルな気持ちにもなる。「すげえいい」としか言い表せないんですけど。

AAAMYYY 沖縄へ行ったときとかすっごい楽しそうだもんね。

小原 そうそう、三線も大好きですし。

Natsuki 弦の響きが「直」だからなのかな。ああいう楽器って、確かに弦が「揺れている」音が聞こえるもんね。

ー倍音が多くてピッチが不安定なところも心を揺さぶりますよね。12音階では割り切れないというか。

Natsuki ああ確かに。それもノスタルジックな気持ちを喚起させる要素ではあるかもしれない。
小原 決して太陽が燦々と降り注ぐ下で演奏するものじゃないというか(笑)。しかも民族楽器って神楽だったり宮廷音楽だったり、お上のために演奏するためのものが多いじゃないですか。

ーそこが神秘的でもありますよね。

小原 たとえば祭囃子とかも、何の楽器が鳴っているのか分からないんですけど、いつの間にかそれが自分の中で抽象化されたサウンドになってるんです。自分の地元には「よさこい祭」や天狗を祀る祭りとか、その行事で山に鬼を探しに行くとかがあって、そういう原体験と自分の中で鳴っていたであろうサウンドが結びついているので、アジアの楽器のサウンドを聴くとノスタルジーを覚えるのかもしれない。

ーしかもTempalayはそういう楽器を、ロックというイディオムで鳴らしているのが強力なオリジナリティになっていると思います。

小原 前からそういうことをやってきたつもりだったんだけど、今回はそれがより目立ったんでしょうね。今までは、メンバーが弾けない楽器を取り入れることに抵抗もあったのかも知れない。それを取っ払い、二胡奏者の吉田悠樹さんをゲストに迎えるなどしたことも大きいと思います。

ーNatsukiさんは、今回サウンド面ではどのようなアプローチをしましたか?

Natsuki 全体的にかなりビートの強いミックスになりましたね。今回、ほとんどの楽曲のベースを高木祥太くん(BREIMEN)くんが弾いてくれていて、彼のプレイを聴いたときに「アタックの速いドラムと相性がいいのかも知れない」と思ったんです。今までだったら出さなかったであろうアタック感を、今回は割と出していますね。とはいえ音圧重視のドラムにはしたくなかったので、いい塩梅のバランスを探していました。以前までのTempalayが「60年代の追求」だとしたら、今回はそこから10年経って70年代。ハードロックが全盛だった頃の、アタックの強い音像を今のTempalayにミックスしてみたかったんです。そういう意味では、今までにないパワー感が全体的にあるのかなと。それと今回は全体的に「明るい」ですよね。曲調というよりは質感がちょっとだけオープンになったのかなという気がします。

ー音像の明るさはどこから来ているのでしょう。

Natsuki 以前までは、いろんな音が飽和していてそれが「Tempalayらしさ」でもあったと思うんですけど、今作は割と各音の輪郭がしっかりした中で絡み合っている、その絶妙な絡みがよく見えるようになっているからじゃないかなと。ギターとシンセの棲み分けも、前よりちゃんとできていて、それぞれの楽器がちゃんと活きている感じがします。

ーAAAMYYYさんはいかがですか?

AAAMYYY レコーディングはほとんどリモートで参加したのですが、レコーディングされたドラムのデータをもらって、それをベースに自宅でシンセの音を作り込むことができました。ソフトシンセ類はあまり使わず、自分が持っているシンセの実機をメインで使えたので手応えを感じています。

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