girl in redが「心の闇」を乗り越え、インディーロックの新しい主役に躍り出るまで

脳内の不協和音と向き合った「Serotonin」

4月30日に発売となる『if i could make it go quiet』は、彼女の初のフルレングス・アルバムとなる。アルバム内の演奏はほとんど彼女ひとりで行ったものだ。

「ベースと、ギター、ピアノを少しずつ弾いて、歌ってるんだ」と、マリーは言う。「そうそう、家にはチェロもあって。チェロを買ったんだけど、躁状態だったからかな。結局チェロを触ったのなんて1度だけ。ベッドに放り投げたこともある。だからチェロに関しては、触ってベッドに放ったことがあるだけ。今年はサックスも買った。絶対サックス好きになるでしょ!なんて思ってたけど、結局1回しか触ってない。なんか今めちゃくちゃ早口になってる! 今日はコーヒーを飲みすぎたみたい」


Photo by Jonathan Kise 

2019年から2020年にかけて制作されたこのアルバムは、マリー自身のセクシュアリティに対する想いや、メンタルヘルスへの苦悩を改めて掘り下げたものとなっている。「このアルバムの中身のほとんどはただの雑音、たくさんの精神的なノイズなんだ」と、彼女はタイトルについて語っている。「”精神的なノイズ”ってものが存在するかどうかはわからないけど、時々、自分はそれをたくさん抱えているように感じることがある。みんなはどうかわからないけど、少なくとも自分はそう」

フィネアスがプロデュースを手掛けたアルバムの1曲目「Serotonin」は、リスナーをマリーの脳内の不協和音の中へと思い切り放り込む。「自分のメンタルヘルスについてこれまで他人に語ったことはなかったけど、セラピストに嫌われているんじゃないかって不安につきまとわれていたんだ」と、彼女は言う。「それで、セラピストの質問に答えるのをやめてしまった。自分なんかと話をしたいわけがないと思ったから。精神は時に、自分でも理解し難いようなおかしな方に働くんだ」



特性ともいえるそのストレートな物言いで、12歳のときに父親が交通事故に遭ったことをきっかけに、自分の脳の複雑さについて考え込むようになったとマリーは明かした。「簡単に言えば、あの事故のおかげで壊れてしまった」と、彼女は言う。

「YouTubeで気味の悪い動画をたくさん見ていた。人々の病気だとか、おかしな動画を見続けるうちに、自分の手首を切ってしまおうって馬鹿げた衝動に駆られるようになった。キッチンに近くのが怖くなった。自分が本当にイカれた、孤独な人間だって思考のスパイラルに囚われてしまってた。これが『Serotonin』という曲で本当に表現したかったこと——自分が実際に“感じた”奇妙な感覚すべての蓄積。自分と同じような “問題” を多くの人が抱えていることを知って、自分のことも前より気楽に打ち明けられるようになった」

Translated by bacteria_kun

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