多様化と更なる充実が進む、UKブラックミュージックの今

BBC Sound of 2021で1位に選ばれたパ・サリュー(Photo by NBC/NBCU Photo Bank via Getty Images)

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、音楽カルチャー誌Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2021年3月25日発売号の誌面に掲載された、現在のUKブラックミュージックの充実ぶりをキャプチャーした記事。2010年代半ばのグライム復活を発端に、進化と拡大を続けてきたUKブラックミュージックは今、再び最盛期を迎えつつある。

2010年代後半のイギリスにおいて、もっとも多くの優れたプレイヤーたちがしのぎを削り合い、質/量ともに文句なしの充実を見せた音楽はジャズでもインディでもなく、ラップを中心としたブラックミュージックだった。そして、その勢いは2021年もまったく衰えることがなさそうだ。

2014年にスケプタがグライム復活の狼煙を上げたことに始まり、Jハスが牽引したアフロバッシュメントの隆盛、ヘディ・ワンが象徴するUKドリルの躍進など、2010年代のUKラップはアフリカ音楽/移民やシカゴドリルなど「外部」の影響を取り込みながら進化を続けてきた。その盤石な基盤に支えられ、早くも2021年は多くの充実作に恵まれている。

デイヴがエグゼクティブプロデューサーを務めたフレッド『Money Can’t Buy You Happiness』(全英2位)は、ストリートライフを詳細に描写しながらも抒情的なセンスが光る、The Guardian曰く「メランコリー・ラップ・リアリズム」。

Fredo - Money Can’t Buy You Happiness



自らをジョーカーと呼んでいたスロウタイは2nd『TYRON』(全英1位)で内省的な一面を見せ、ゼロ年代から活躍するベテランのグライムMCゲッツは、スケプタやストームジーからエド・シーランまでを迎えたメジャーデビュー作『Conflict of Interest』(全英2位)で、「15年のハードワーク、ノーブレイク」というジレンマを遂に打破した。

Slowthai - TYRON



Ghetts - Conflict of Interest



NYタイムズが「UKドリルシーンを代表する声」と評するディガDのミックステープ『Made In The Pyrex』(全英3位)は、ヘディ・ワン以降のシーンの勢いを象徴する充実作。

Digga D - Made In The Pyrex



そして、リリースは昨年11月だが、BBC Sound of 2021で1位に選ばれたパ・サリューの初ミックステープ『Send Them To Coventry』は、ダンスホール、アフロビーツ、グライム、ドリルなど多彩なビートを採用しながら、そこに自身のルーツであるガンビアのエレメントを掛け合わせた「Jハス以降」の傑作だ。

ちなみに、このミックステープのタイトルは「爪弾きにする」という意味の慣用句(実際にサリューはコベントリーの生まれでもある)。これは、10歳までガンビアで暮らしたサリューが西アフリカ訛りの英語のせいで爪弾きにされ、イギリスのブラックコミュニティにおいてマージナルな存在だったことを意味している。と同時に、だからこそ活況を呈するシーンに埋もれない独創的な傑作を生み出せたという意味合いも含まれているのだろう。

Pa Salieu - Send Them To Coventry



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