米銃乱射事件で注目集める「大きいお友達」の極右過激派たち

マイリトルポニーのぬいぐるみを頭に乗せた男性。(Photo by Andrew Caballero-Reynolds/AFP/Getty Images)

米物流大手フェデックス施設で4月15日に発生した銃乱射事件。インディアナ州にあるフェデックスの倉庫で男が銃を乱射し、8人が死亡。容疑者は元従業員の男(19歳)で、現場で自殺した。事件の後、ウォール・ストリート・ジャーナル紙はFacebookが配布した内部メモを引用して、男が子供向けアニメシリーズ『マイリトルポニー~トモダチは魔法~』への熱い想いを語る場としてFacebookアカウントを使っていた、と報じた。この番組を好む成人男性ファンはしばしば「ブロニー」と呼ばれている。

メモではすぐに、ブロニーカルチャーと事件の関連性を示すものは何もないと否定されているものの、犯人は犯行におよぶ1時間前に、アニメに登場する黄褐色のキャラクター、アップルジャックというポニーへの愛情を投稿していた。「来世ではアップルジャックと一緒になりたい、彼女のいない人生なんて無意味だ」と、犯人は投稿。「もし来世がなくて、彼女が現実でないなら、どのみち俺の人生なんて意味がなかった」 またメモによると、犯人は過去にも、キリストは復活してヒトラーになったとほのめかすミームなど極右的なコンテンツを投稿していたという。

ブロニーのファンカルチャーが大いに誤解されていること、本来は人種差別的でも白人至上主義でもない点はあらためて述べておく必要がある。大多数のブロニーは、単純に『マイリトルポニー~トモダチは魔法~』が好きなだけなのだ。ファンコミュニティのメンバーは事件の被害者への募金活動をGoFundMeでいくつも立ち上げ、SNS上で拡散している。とはいえ、犯人のソーシャルメディアでの活動はコミュニティ内の不穏な傾向にあらためて関心を集めた。コミュニティは当初から、極右勢力に浸食されていた。

ブロニーとは、アニメシリーズ『マイリトルポニー~トモダチは魔法~』を好む男性ファンのこと。ブロニーカルチャーの起源を取材したジャーナリスト、ローレン・オルシーニ氏によると、ブロニーコミュニティはアニメの放映開始から2年経った2010年、4chanの掲示板から誕生した。成人男性が熱をあげるのは尋常ではない気もするが、アニメと作品が発信するメッセージに純粋に共感する男性は大勢いた。

「最近の多くの子供向けメディアと同様に、『マイリトルポニー~トモダチは魔法~』も複数の視聴者を念頭に置いて制作されています。親を飽きさせずに子供の心をつかむためです」とオルシーニ氏は言う。「子供と一緒に視聴する大人にも訴求することで、当然大人のファン層も形成されていきました」

『マイリトルポニー』の性的要素に惹かれる人々は、自慰にふける人を意味するfapperと馬の蹄の音をあらわすclopをかけて、clopper(パコパコファン)と呼ばれてきた。だがやはりキャラクター文化同様、『マイリトルポニー』のファンの多くはアニメのキャラクターに性的妄想を抱いたりはしていない。「性的目的だけの集まりだ」というメインストリームの見方にも異を唱えている。「ポニーと友情をテーマにした女の子向けの番組を男性が好むのは、なんとも居心地が悪いという風潮の現れですね」と言うのは、ブロニーカルチャーを研究しているメディア研究の専門家、アン・ギルバート教授だ。以来ブロニーはまっとうなインターネット・サブカルチャーとして花開き、ブロニーコンというコンベンションが毎年開催される他、ファンの姿を描いたドキュメンタリーも数多く制作されている。

Translated by Akiko Kato

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