カネコアヤノが語る、流されやすい自分に「言い聞かせるため」に歌う理由

カネコアヤノ

CDショップ大賞に初入賞した『祝祭』が発売されたのは2018年。仕事終わりに駆けつけたインストアライブには店の外まで多くの観客が集まり、彼女がすでに多くのリスナーの心を惹きつけていることを痛感した。

翌年リリースされた『燦々』では、第12回CDショップ大賞<青>に選出。そして2020年、自身のキャリアで最大規模となる中野サンプラザでのワンマンライブをあっという間にソールドアウトにしてみせた。

そして2021年4月14日、6枚目となるフルアルバム『よすが』を発売。5月からは全国8都道府県、9公演に渡るツアーをスタートさせる。

年々加速度的にファンを獲得し続け、その存在感を確固たるものにしてきたカネコアヤノだが、どこまでいっても彼女の音楽が光閃のように新鮮な煌めきを失うことはなかった。この日の取材で彼女が話してくれた言葉の中に、私たちが大切にしている心のありかを再確認してもらうことができたらと思う。

—ここ1年は特に気持ちが内にこもってしまうことも多くありましたが、今回のアルバムは「追憶」の歌詞にあるように、まさに外に連れ出してくれるようなアルバムだなと思いました。「抱擁」のMVもすごく素敵で。一週間前に撮影したって聞いてびっくりしたんですけど。

ありがとうございます。MVは先週撮ってきて、帰ってきたばっかりなんです。



—YouTubeのコメントでも励まされたって声がいっぱいあって。

ありがとうございます、嬉しいです。ああいう壮大なところに一人で立って、衣装はYUKI FUJISAWAのワンピースで、映画の長回しみたいなミュージックビデオを撮りたいんですって奥山さん(監督・奥山由之)に相談して。構想の段階では泣くところまではもちろん入れてなかったですけど、奥山さんが雪山で撮ることを提案してくれて、ありがたかったです。

—場所はどこですか?

長野の八方尾根って山です。標高は割と高くて。

—すっごい寒そうでした(笑)。

寒かった。天候があるから2日間のチャレンジだったんですけど、初日がマイナス8度とかになっちゃって。

—ええ!  時間は明け方ですか?

明け方の5時台かな。2日間のその時間しか撮影できないから、1時間ぐらい長回ししてって感じでしたね。

—本当に素敵なMVでした。「爛漫」が去年の今頃にでて、私自身すごく救われて。当時急に先が見えない世の中になったと思うんですけど、それでも変わらない自然のたくましさに気づかせてくれるような曲でした。「抱擁」しかり、もちろんコロナは関係なくつくった曲だったと思うんですけど。

確かに、そうですね。



ー変わらないことを大事にしたい、みたいなお話をされてましたけど、それもひとつ魅力だなと。

変わってもいいんですけど、我を忘れたくないです。忙しくなったりすると忘れがちになっちゃうけど、自分で選んでここにいるわけだし、それが分かんなくなると多分とっ散らかっちゃうから、「そもそもなんで音楽やってるんだっけ」みたいな一番シンプルなことは、定期的にちゃんと考えるようにしたい。我を忘れたくないです。

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