歴代最高のメタルアルバム100選

80位 - 76位

80
ミニストリー
『Psalm 69: The Way To Succeed
And The Way To Suck Eggs』 1992年

インダストリアル界の反逆児へと進化

トレードマークだったシンセサイザーをギターに持ち替え、ニューウェイブ・バンドからインダストリアル界の反逆児へと進化したミニストリーは、濃密な悪夢のようなサウンドコラージュに満ちた5作目でブレイクを果たした。機関銃のようなリフの嵐の背後で、バンドの核であるアル・ジュールゲンセンは誘拐犯が脅迫文をしたためるかのごとく、様々なサンプルをつなぎ合わせている。バットホール・サーファーズのギビー・ヘインズが参加した「Jesus Built My Hotrod」はバンドにとって初のヒット曲に。アルバム自体もプラチナディスクに認定され、マリリン・マンソンやラムシュタイン、オージーなどインダストリアル系アクトが躍進する基盤を築いた。S.E.



79
アット・ザ・ゲイツ
『Slaughter Of The Soul』 1995年

後続に影響を与えた唯一無二の音世界

80年代後半から90年代前半にかけて、スウェーデン東部のストックホルムでは、エントゥームドやディスメンバーなどパンク寄りのアプローチを追求するバンドが台頭していた。一方、西部の港町ヨーテボリでは、ディスセクションやイン・フレイムズなど悪魔を崇拝するバンドがシーンを賑わしていた。同シーンを代表するバンドの一つだったアット・ザ・ゲイツは、初期作では表現力とパワーを売りにしていたが、本作では邪悪さを感じさせる類まれなメロディセンスにフォーカス。だがバンドは不運にも、その功績が正しく評価される前に解散した。2000年代初頭に商業的成功を収めたアメリカのメタルコア勢には、本作の影響がはっきりと見て取れる。I.C.



78
ヴォイヴォド
『Dimension Hatröss』 1988年

ディストピアンなコンセプトアルバム

ケベック北部の田舎町で育った4人の若者たちによるヴォイヴォイドは、ピギーによる超高速ギターリフとSF的テーマが印象的な初期3作で存在感を示したあと、本作でイノベーターとしての地位を確立した。冬のベルリンで制作を進めていた当時の彼らはアナーコ・パンクとインダストリアル、特にアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンに傾倒。そのセッションが産んだディストピアンなコンセプトアルバムは、翌夏のメタルシーンを席巻する。スピード感と殺気はそのままに、自己規律とインダストリアル感漂うサンプル、変拍子、そして耳に残る歌メロなどが混在した本作は、トゥールやオーペス、ドリーム・シアターなどにも大きな影響を与えた。A.B.

77
メシュガー
『Destroy Erase Improve』 1995年

メタル突然変異種の基盤を確立

メシュガーの2作目は『ターミネーター』の世界観を思わせるが、その内容は決して名前負けしていない。デスメタルの凶暴さ、スラッシュの正確さ、イェンス・キッドマンのハードコア譲りの咆哮、フレドリック・トーデンダルのジャズフュージョン的高速ギターソロ、気が狂いそうなほど複雑なリズムパターンなど、以降の全作品に共通するバンドのアイデンティティは本作で確立された。バンドはのちにダウンチューニングの7弦/8弦ギターやドラムプログラミングを採用したり、アルバム1枚分に相当する長尺曲を発表したりするようになるが、ジェントと呼ばれるメタルの突然変異種の基盤を確立した本作のシグネチャーサウンドが揺らいだことはない。S.S.



76
トゥイステッド・シスター
『Stay Hungry』 1984年

極限までキャッチーな3分間アンセム

80年代初頭にアトランティックと契約したとき、バンドのキャリアは既に10年を超えており、グラマラスなイメージもLAの若手バンドに奪われていた。しかし彼らは、「We’re Not Gonna Take It」や「I Wanna Rock」に象徴されるキャッチーなアンセムを生み出す作曲能力を備えていた。この2曲のヒットと、バンドの顔であるディー・スナイダーが俳優のマーク・メトカーフとドタバタ劇を繰り広げるMVの人気も手伝い、トゥイステッド・シスターはポップカルチャーに旋風を巻き起こす。過剰露出と内輪もめが原因で、バンドの人気はその後急速に衰えていったが、数百万枚を売り上げた本作が80年代のハードロックとMTVのイメージを刷新したことは確かだ。R.B.



Translated by Masaaki Yoshida

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