歴代最高のメタルアルバム100選

20位 - 16位

20
アンスラックス
『Among The Living』 1987年

オーディエンスと同じ目線のリアルさ

アンスラックスの3作目『Among The Living』をスラッシュメタルのクラシックたらしめているのは、「Caught In A Mosh」等の楽曲で発散される若者たちの怒り(“俺ん家から出て行きやがれ!”)と、その表現手段としてのスラムダンスだけではない。テンポの急加速やリズムチェンジがインパクト大な「One World」等、楽曲そのもののユニークさもまた大きな魅力だ。ベナンテを含むメンバーたちは多くの点において普通なのかもしれないが、彼らが圧倒的なテクニックによってオーディエンスを熱狂させる超一流のミュージシャンたちであることは確かだ。「Efilnikufesin(N.F.L.)」「I Am The Law」「Indians」等、バンド史上最もキャッチーで親しみやすい楽曲群では、興奮をオーディエンスと分かちあおうとするバンドの姿が目に浮かぶようだ。J.D.C.



19
メガデス
『Rust In Peace』 1990年

スラッシュメタル第一波の最高到達点

メガデスが堅固なソングライティングと超絶テクニックを高次元で結びつけた『Rust In Peace』は、スラッシュメタルの第一波における最高到達点だ。機関銃のようなパッセージで幕を開ける2部構成の冒頭曲「Holy Wars...The Punishment Due」から、スタッカートのリズムが小気味良い最終曲「Rust In Peace…Polaris」までの40分をフルスピードで駆け抜ける本作では、デイヴ・ムステインの変態フィンガリングが生み出す迷宮のようなリフ、戦争と宗教をテーマにした歌詞(ムステインはこう語っている。「当時は冷戦がまだ続いていて、アメリカは核兵器を旧ソ連の方角に向けて配備していた」)、急展開を見せるアレンジ、そして全曲に共通するパンク譲りの爆発的エネルギーと性急なリズム等、バンドの魅力を存分に堪能することができる。R.B.



18
トゥール
『Ænima』 1996年

オルタナメタルの開拓者による2nd

2ndアルバムの原題『Ænima』は造語だが、ユングが提唱した「アニマ」または生命体の意味を含んでおり、全編を通して「我々はなぜ存在するのか」という実存的疑問が反芻される。シンガーのメイナード・ジェームス・キーナンが悪意を浮かび上がらせようとするのに対し、プログレ譲りのドラミングとギターが織りなすリッチなテクスチャーは、歪んだ世界観を増幅させている。本作はダブルプラチナムを記録し、オルタナメタルの開拓者として登場したトゥールは、以降20年以上にわたってヘヴィロック界の最重要バンドの1つであり続けている。「俺たちはただ、今起きている無数の形而上の変化、そして精神面と感情面における変化を反映しようとしてるだけだ」。キーナンは1996年に本誌にそう語っている。J.D.C.



17
マーシフル・フェイト
 『Melissa』 1983年

多くのブラックメタルバンドを感化

フロントマンのキング・ダイアモンドによるヘリウムガスを大量に吸い込んだかのような金切り声シャウトが炸裂する『Melissa』の冒頭の20秒間は、メタル史上最高のシーケンスのひとつに数えられる。「ホラー映画があれだけ人気なのは、人々が常にちょっとした恐怖感を欲していることの証拠さ」。キング・ダイアモンドは1987年頃に、ショックアピールを狙った本作の歌詞についてそう語っている。「ホラーストーリーだと思えばいいんだよ」。悪魔を歓迎する「Black Funeral」、メリッサという名の死んだ魔女について不気味に囁く「Satan’s Fall」等は、教会に火をつけようとするノルウェーのフェイスペインティングを施したブラックメタルバンドたちを感化した。サタンは実在しないかもしれないが、キング・ダイアモンドは本物だ。K.G.



16
ディオ
『Holy Diver』 1983年

今作でメタル界最重要人物の1人へ

70年代後半から80年代前半にかけて、レインボーとブラック・サバスで圧倒的歌唱力を見せつけたロニー・ジェイムス・ディオは、1983年発表のソロデビューアルバムによってメタル界の最重要人物の1人となる。若干20歳のアイルランド人ギタリストのヴィヴィアン・キャンベル(泣き叫ぶようなリードは、ディオの甲高いヴォーカルとの相性が抜群だった)という強力なパートナーを得たことで生まれた、ディオ史上最もストレートなメタルアルバムとなった本作。「Stand Up And Shout」や「Rainbow In The Dark」等のアンセム、そして『ダンジョンズ&ドラゴンズ』めいたファンタジーと社会問題を結びつけるタイトル曲を収録している。「俺のソングライティングには常に中世の世界観が反映されてる」。ディオはArtist誌にそう語っている。D.E.



Translated by Masaaki Yoshida

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