歴代最高のメタルアルバム100選

35位 - 31位

35
メタリカ
『Kill ’Em All』 1983年

スラッシュメタルの立役者

モーターヘッドのスピードと、ダイアモンド・ヘッドやヴェノム等に象徴されるニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタルの精巧さを組み合わせたメタリカは、80年代前半にスラッシュと呼ばれるメタルのサブジャンルを確立し、ヘッドバンガーズを狂喜乱舞させた。脳を揺さぶる強烈な9曲とベースソロ1曲(ワンテイクの一発録り)からなるデビューアルバム『Kill ’Em All』は、スラッシュメタルのグラウンドゼロだ。発表から30年以上が経った現在でも、凄まじい速さで突き進む「Whiplash」は、バンドが成し遂げようとしていたことを雄弁に物語っている。“心の奥深くにお前を狂わせる何かが眠ってる / 流れ出るアドレナリンに身を任せ お前は何もかもを切り裂き やがて狂人のように振舞い始める”。K.G.



34
ブラック・サバス
『Master Of Reality』 1971年

メタル史上最もヘヴィなリフのひとつ

ブラック・サバスの最初の2作が実質的にスタジオライブ音源だったのに対し、本作『Master of Reality』は真の意味でのアルバムだ。過去2作と同様にプロデュースを務めたロジャー・ベインは、ニュアンスに満ちつつもダイレクトなサウンドをバンドに意識させた。脈打つような「Children Of The Grave」において、ドラマーのビル・ウォードによるティンバレスはファンキーさを演出している。ギタリストのトニー・アイオミは同曲のアウトロ部で実験的なノイズを生み出しているほか、バラードの「Solitude」ではフルートを吹き、「After Forever」(ベーシストでキリスト教徒のギーザー・バトラーが歌詞を手がけた同曲は史上初のクリスチャンメタル曲とされている)ではシンセサイザーを操っている。「Into the Void」はメタル史上最もヘヴィなリフのひとつだ。K.G.



33
メガデス
『Countdown To Extinction』 1992年

バンドの特徴が全編に詰まった成功作

1991年に発表されたメタリカの『Metallica』はシーンの構図を一気に塗り替えてしまったが、デイヴ・ムステインとメガデスは流行に迎合することなく、本作で独自のサウンドを確立してみせた。クロスオーバーな成功を収めた破壊力抜群の「Symphony Of Destruction」が、フロントマンのムステインの最高傑作であることは疑いないが、揺らぎを感じさせるリフやスピーディなソロ、そして正確極まりないリズムといったメガデスのトレードマークは、本作の全編で堪能することができる。狂気のサイコドラマを描く「Sweating Bullets」、緊張感に満ちた「Skin o’ My Teeth」、そして凝りに凝ったタイトル曲まで、メインストリームにアピールするフックとメタルバンドとしてのプライドの両方に支えられた本作は、Billboardチャートで2位を記録した。A.B.



32
ブラック・サバス
『Sabotage』 1975年

深い闇に満ちた6作目

1975年初頭、ブラック・サバスはドラッグへの依存、そして前マネージャーとの醜悪な法廷闘争で疲弊しきっていた。「誇張じゃなく、レコーディングスタジオで延々と宣誓供述書に署名したりしていた」。バンドの6作目の制作背景について、ギーザー・バトラーはそう語る。「『Sabotage』っていうタイトルはそういう背景を反映してる。あのレコードの制作過程は、俺たちから金を毟り取ろうとする連中に妨害されっぱなしだった」。だが不思議なことに、バンドが置かれていた退廃的状況は作品に深みをもたらすことになった。初期のクラシックのような明快さにこそ欠けるものの、オジー在籍時の他の作品にはない切実さが宿っている。バンド史上最も深い闇に満ちたレコードのひとつであることは確かだ。H.S.



31
スレイヤー
『Seasons In The Abyss』 1990年

格の違いを見せつけた5作目

1986年作『Reign In Blood』のようなシーンを一変させるほどのインパクトこそないものの、1990年に発表した5作目『Seasons In The Abyss』は、バンド史上最も焦点が定まったレコードと言えるかもしれない。本作では初期のストレートなスラッシュの攻撃性と、1988年作『South Of Heaven』の不吉な迫力が違和感なく融合している。「War Ensemble」「Expendable Youth」「Hallowed Point」、そして特に「Dead Skin Mask」(エド・ゲインにインスパイアされた悟りを開こうとするかのような同曲は、連続殺人犯を題材にしたスレイヤーの曲群の中でも屈指の出来だ)の歌詞には、暴力と死と流血というテーマが一貫して見られる。「俺たちが意識したのは、ただスレイヤーであり続けることだった。周りに格の違いを見せつけてやる必要があった」。ギタリストのケリー・キングはかつてそう語っている。D.E.



Translated by Masaaki Yoshida

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