プレイボーイ・カルティが語る、ラップスターの孤独と沈黙

プレイボーイ・カルティ:2021年2月19日、米アトランタにて撮影(Photo by Josiah Rundles for Rolling Stone)

『Whole Lotta Red』が全米1位になったアトランタ出身のラッパー、プレイボーイ・カルティは最近のムードを、「パンク・モンク(Punk Monk)」と形容する。その表現には様々な意味合いが込められている。毎日足を運ぶスタジオで作業に没頭する彼の姿は、敬虔な信者を思わせる。

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彼は現在、最近作『Whole Lotta Red』のデラックス版の監修に取り組んでいる。ロクに寝ていないと話す彼は、スタジオでのクリエイティブプロセスにこそ安らぎを覚えるのだという。拠点であるアトランタと息子が暮らしているカリフォルニアを頻繁に行き来している彼は、ニューヨークのロウアー・イースト・サイドに引っ越すことを検討している。「あの街は俺を夢中にさせてくれる」。彼はそう話す。

「パンク・モンク」は、昨年12月にチャートの頂点に立った『Whole Lotta Red』収録曲のタイトルでもある。彼は容易に口を開かないことで知られるが、同曲からは彼が考えていることを伺い知ることができる。具体的な名前を挙げて、カルティは音楽業界に対するフラストレーションを残酷なほどストレートに表現する。「ヤツらは俺を白人アーティストにしようとする でも俺はリル・ディッキーとは違う」。新たに身につけたヴォーカススタイルである、声帯の限界に挑むかのような唸り声で、彼はそうまくし立てる。異なるヴァイブスを羅列するような同曲は、モッシュピットでの瞑想を思わせる。現在24歳の彼はパンクロックからの影響を頻繁に口にしているが、今はそれに心の平穏のようなものを見出そうとしている。「孤独に耐えられない人もいるけど、俺はそれが大好きなんだ」。カルティはそう話す。「『パンク・モンク』はこの世界に生きる一匹狼のアンセムだ。自分のすぐそばにいる人々だけが、唯一の味方なんだよ」



『Whole Lotta Red』はクリスマスの直前にリリースされた。「俺からのプレゼントだと思ってもらいたかったんだよ。だからあのタイミングでリリースしたんだ」。カルティはそう話す。同作はソーシャルメディア上で賛否両論を巻き起こし、ハードコアなファンがすぐさま飛びついたのに対し、よりラフなエッジに否定的な反応を示す人々もいた。攻撃的なドラムパターンを中心とするプロダクションと、カルティのユニークなヴォーカルスタイルのコンビネーションが描くのは、混沌としたランドスケープだ。「Stop Breathing」では、憤怒を滲ませた荒ぶる息遣いと歪んだドラムが絡み合い、ヒプノティックな効果を生み出している。同作のハイライトであり、ラップトラップというよりもパンクバラードに近い「Control」は、2020年屈指のラブソングだった。「Ever since I met youooouu」というラインの語尾を情感たっぷりに伸ばすさまは、カルティの圧倒的なヴォーカルレンジを体現している。

Translated by Masaaki Yoshida

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