プレイボーイ・カルティが語る、ラップスターの孤独と沈黙

ロックスター的な価値観

ファッションにこだわるカルティにとって、ニューヨークは理想的な街なのかもしれない。『Whole Lotta Red』には、フランスの高級ブランドGivenchyのクリエイティブディレクターを務めているマシュー・ウィリアムズが、エグゼクティヴプロデューサーとしてクレジットされている。音楽ビジネスとファッション業界がタッグを組んだ前例は多く存在するが、このコラボレーションは両者の共存関係の加速を象徴している。特にウィリアムズは、これまでもファッションと音楽のコラボレーションの第一人者として活動してきた。ドレイクが「トゥーシー・スライド」で、彼のブランドAlyxに触れていたことも記憶に新しい。

「彼は俺が信じることのすべてを体現してる。俺が言葉にしようとしているものを、彼は服で表現しているんだ」。長い付き合いだというウィリアムズについて、カルティはそう話す。

パンデミックの最中にありながら、カルティは『Whole Lotta Red』を制作している間、ライブパフォーマンスのことを常に念頭に置いていた。「オーディエンスがどう反応するかを想像するんだ」。彼はそう話す。すべてのロックスターと同様に、カルティの音楽はライブでこそ本領を発揮する。そういう意味では、本作はこの上ないタイミングでリリースとなった。「『Whole Lotta Red』は、パフォーマーとしての自分の力量を示す上で理想的なレコードなんだ」。彼はそう話す。「今このアルバムがリリースされれば、ショーができるようになる頃には、その魅力が十分に理解されているだろうからね」

今や完全に確立されたカルティのロックスターとしてのモードは、音楽やファッション以外の面にも現れている。彼との電話取材には、あまのじゃくなロックミュージシャンを相手にする時と同程度の忍耐を必要とする。『伝説のロックスター再生計画!』や『あの頃ペニー・レインと』を思い浮かべるといいかもしれない。カルティにつきまとうミステリアスなイメージは計算されたものではなく、普段の彼のライフスタイルから自然に派生したものであり、パンク・モンクとしての生き様の一部といってもいい。電話を切る直前に、筆者は彼が吸血鬼を新たなペルソナとした理由について尋ねた。その質問に対する彼の回答は、カルティのミュージシャンとしてのアイデンティティを端的に表現している。

「ヴァンパイアは不死身だ」。彼は当たり前のようにそう口にした。「あれほどファッショナブルなキャラクターは他にいない」

from Rolling Stone US

Translated by Masaaki Yoshida

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