プレイボーイ・カルティが語る、ラップスターの孤独と沈黙

マンブル・ラップの立役者の一人

プレイボーイ・カルティことジョーダン・カーターはアトランタ南部に生まれ、10代の大半をバスケットボールと折衷したクリエイティヴィティの発散に費やした。メンバーとして所属していたアトランタのAwful Recordsコレクティブを通じて、彼はラップにおける実験的プロダクションに興味を持つようになった。プロデューサーのEtherealの作品での彼のパフォーマンスは、類まれな才能の片鱗を既にうかがわせていた。2015年発表の「Beef」での控えめなドラムパターンに乗せた軽快なライムからは、後にトレードマークとなるヴォーカルスタイルと打ち寄せる波のようにランダムなアドリブの原型が見て取れる。彼はヴァイラルヒットを記録した「Magnolia」を収録した、セルフタイトルの初ミックステープを2017年に発表する。同曲における「ニューヨークにいるときはドラッグを靴下の中に忍ばせてる」という耳に残るフックは無数のミームを生み出し、ネット上における音楽の消費方法が一変する前兆となった。その1年後にリリースされた『Die Lit』で、彼はその存在感を確固たるものにした。カルティと彼を起点としたマンブル・ラップ(ラップのサブジャンル)の一大ブームは、以降のシーンにおけるキーワードとなった。



『Die Lit』と『Whole Lotta Red』の間の空白期間、カルティは頑なに沈黙を貫いていた。ファンベースが急速に拡大していたにもかかわらず、新たに曲が公開されることはなかった。同世代のライバルたちとは対照的に、ソーシャルメディアをほとんど活用しないことも、彼の謎めいた存在感に拍車をかけている。「俺はこれまでもずっとそういうタイプだった」。露出を控える姿勢について、彼はそう語っている。「俺が口を開くのは、そうすべき理由がある時だ」

私生活についてほとんど語ろうとしない彼だが、世間の議論の的となることはある。『Whole Lotta Red』のリリース後、カルティの元ガールフレンドであり、彼との間に子供をもうけているラッパーのイギー・アゼリアが、彼が父親としての義務を放棄していると語ったことを受け、カルティはネット上で激しい非難に晒された。カルティはアゼリアの主張について回答しなかったが、後に息子であるOnyxとの写真をTwitterに投稿した。電話取材の場で、彼は自分の私生活についてこれ以上世間に知られたくないと語っていた。「俺は大勢の人間の面倒を見てる」。彼はそう話す。「俺には子供がいる。でも俺が世間と共有したいのは、俺のクリエイティブプロセスと作品なんだ。世間はプレイボーイ・カルティの普段の姿に興味があるんだろうけど、そういう期待に応えるつもりはないよ」

Translated by Masaaki Yoshida

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