Aimerが語った「歌をデザインする」の真意

「夜のアルバム」を作ろうと思った理由

─個人的に、今作で最も好きな曲は「トリル」 だったのですが、この曲はどのようにして作られたのでしょうか。

Aimer:この曲は、跳ねたリズムや温かみのあるギターの音などに助けられているのですけど、昨年、こういう世界になって悲しいニュースが多かったときや、亡くなった人のことを考えていた時に作った曲なんです。歌詞の中で韻を踏んだりすることによって、重くなり過ぎないようにしました。なので、歌詞をすごく読み込んで聴くのと、言葉を響きと捉えて聴くのとでは受け止め方がかなり違うというか。すごくポップにも、すごくヘヴィにも、どちらにも取れる曲にしたいとは思いました。

私自身もすごく手応えを感じたし、プロデューサーの玉井健二さんもこの曲を気に入ってくれて。他の曲だと、最初はシンプルなところから「どうやって上物を足して、キラキラさせていくか?」を考えることが多いのですけど、この曲は極限まで音を削ってシンプルにすることを考えました。ギターは名越由貴夫さんに弾いていただき、歌もグルーヴや乗り方などすごく神経を使いました。実は歌もすごく難しくて。アルバムの中でも一、二を争うくらい難易度の高い曲でしたね。



─梶浦由記さんによる書きおろし曲「wonderland」の、ちょっとエスニックな雰囲気もアルバムのアクセントになっていますよね。

Aimer:梶浦さんは、音楽家なら誰しも興味深いと思える独自の作風がありますよね。今作では「春はゆく」と「wonderland」の2曲をご一緒させてもらったんですけど、ある意味では梶浦さんにお任せして作っていただいたら、偶然にも本作の世界観と共鳴したというか。そもそもヴァルプルギスという祝祭は古代ケルトが発祥なので、そういうところと偶然リンクしたのが面白かったです。だからこそ、他の曲でもスコットランドをイメージさせるようなサウンドを入れても、アルバム全体を通した時にバランスが良くなったかなとも思っていて。そういう意味でも梶浦さんに感謝していますね。



─「ever after」は、ストレートでシンプルなラブソングのようで、孤独を抱えるファンへの想いを歌っているようにも感じました。

Aimer:そういうふうに感じてくれる人もいたら嬉しいです。人との絆や繋がりは、生きる上でなくてはならないものだし、反面それを意識した時にこそ「孤独」に襲われることもあるじゃないですか。でも、その孤独を大事に思う気持ちも持っていたくて。夜をテーマにしたアルバムですが、心温まるような曲が欲しいなと思っていた時に、作品とのタイアップもあってタイミング良くこの曲が生まれました。



─誰かの「孤独」に寄り添ったり、あるいはご自身の「孤独」に向き合ったりすることを、これまで以上に意識しましたか?

Aimer:私がデビューして最初に出した『Sleepless Nights』(2012年)は、「一人ぼっちの夜を過ごしている人に寄り添いたい」という想いを込めたアルバムでした。そこからライブ活動をスタートして、みんなで一緒に楽しむための場を作りたいという気持ちからアップテンポなナンバーにも挑戦していた時期はあったけど、原点を辿れば私の音楽は孤独な場所から始まっていて。それを好きでいてくれている人は、今もすごく多いなとも感じているんです。

それぞれがそれぞれの孤独を心に持っていて、あるいはそれと戦っていたり、大切にしていたり、自分一人の世界を良い意味でも悪い意味でも心に持っている人が、私の曲を聴いてくれていることが多いので、今回は久しぶりに「夜のアルバム」を作ろうと思ったんですよね。

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