KIRINJI・堀込高樹が語る、新体制への移行と「再会」に隠された物語

本当のターニングポイント

―新体制の第1弾シングルが出る今だからこそ、高樹さんがリブートをいつ頃に考え出したのか、その背景には何があったのか伺っておきたいです。まず、バンド活動の終了がアナウンスされたのは昨年の1月31日でした。周囲のリアクションはいかがでしたか?

堀込:人によって様々でした。バンドを一つのまとまりやストーリーとして愛でる文化があるじゃないですか。そういう方たちにとってはショックだったようです。でも、「KIRINJI=堀込高樹を中心とするプロジェクト」として捉えていた人たちは、すんなり受け入れてくれたようでした。

―僕も正直、「そうだよね」と思いました。『11』(2014年)の頃はメンバーの個性を活かしながらアンサンブルを奏でていたのが、『cherish』(2019年)では明らかに高樹さんのアイデア主導になっていましたから。

堀込:そうですね。

―だからきっと、バンド編成で活動してきた8年間のどこかで、大きなターニングポイントがあったのかなと思いますが。

堀込:実は『ネオ』(2016年)のツアー後、コトリンゴさんから脱退の相談がありました。ただ僕としては、ツアーの手応えがすごくあった。

―2016年10月の品川ステラボール公演は圧巻でした。

堀込:だから、もう少しバンドに残ってほしいとお願いしました。でも、映画も大ヒットして(コトリンゴが音楽を担当した『この世界の片隅に』)、自分の活動に専念したい気持ちもよく理解できたので、(2017年12月に)脱退することになりました。

特にライブにおいて、コトリンゴさんの存在感は大きくて、いわばアンサンブルの要でした。彼女が弾くピアノのダイナミクスに合わせて演奏が機能していましたから。そうやって3〜4年ぐらい続けて、いい感じにまとまってきたところだったので、残念ではありましたね。

その後はライブは5人編成+サポートでやっていきましたが、中途半端に穴を埋めるような形にはしたくなかったから、アンサンブルの楽しさよりも、ダンサブルなグルーヴを聴かせるスタイルにシフトしました。長尺のソロを聴かせるのではなく、3~4分の曲が連続して続いていくような感じ。そこから作る曲やレコーディングの方法も変わっていって、それを突き詰めることで完成したのが『cherish』でした。

『11』のような感じを続けていれば、メンバーそれぞれの個性に合わせた音楽を続けられたとも思います。プログラムやシーケンスの割合が増えていくなかで、僕の目指す方向性に合ったものをメンバーに要求していることに対して、「悪いな」という気持ちもありました。


Photo by Kana Tarumi

―でも、これはポジティブな話ですよね。高樹さんが妥協することなく前進し続けた結果ですから。

堀込:申し訳ない気持ちもありますが、「今これを作りたい!」「今これに興味がある!」というものにガッと向き合う瞬発力と、出来上がったものの熱量はダイレクトに繋がっていますから。アイデアがホットなうちに形にしないとダメだと思うんです。

―最近ではMELRAWさんが、『cherish』やライブのゲスト参加で存在感を発揮していましたよね。これからは彼みたいに、今のKIRINJIと相性のいいミュージシャンが参加しやすくなるのかなと。

堀込:MELRAWくんが参加してくれた時点で「あ、次が始まったな」みたいな手応えはありました。夏の配信ライブ(昨年7月の「KIRINJI Studio Live Movie 2020」)でも実感させられましたね。サックスってこんなに場を熱くさせるものなのかって。

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