現代のアメリカン・ドリームを体現する24kGoldn 渡辺志保がその魅力を解説

24kGoldn(Courtesy of ソニーミュージック・インターナショナル)

「時代が生んだスター」という言い回しがあるが、24kGoldn(トゥエンティ・フォー・ケー・ゴールデン)ほど、今の時代の潮流に乗ってスターダムにのし上がった若手アーティストがいるだろうか。のし上がったというよりは、彼の音楽性やアーティストとして歩んできた道のりが自然と彼をスターへと押し上げた、という表現の方が近いかもしれない。

“ゴールデン”という目立つ名前は本名だ。2000年、米サンフランシスコに生まれたゴールデンは、小・中学生の時に教会のクワイアに参加し、また、音楽ゲームの“ギターヒーロー”などに親しみながら徐々にアーティストへの道を目指すようになる。SoundCloudに自作の楽曲をアップロードするようになると、あるトップ・プロデューサーがゴールデンの存在に注目し始めた。それがエミネムやタイガらのヒット・シングルを手がけているDA・ドーマンだ。ドーマンとの出会いは、ゴールデンにとって強力な切り札の一つとなる。また同時にゴールデンは奨学金を手にし、有名校の一つ、南カリフォルニア大学への進学を決める。

2019年、彼はドーマンのアシストのもと、EP『DROPPED OUTTA COLLEGE』を発表する。そして、EPに収録された一曲「CITY OF ANGEL」が彼の運命をさらにドラマチックに変えていく。24kGoldnの名前を一気に全米規模へと押し上げた。ハイトーンで歌い上げるコーラスはエモーショナルで、何よりキャッチーであり、ゴールデンのアーティスト性を印象付けるには十分だった。ここ数年、TikTokでの話題を起爆剤にしてヴァイラル・ヒットを記録する若手アーティストは乱立している。リル・ナズ・Xのように、たった一曲のヒットによってアーティストとしてのその後の道筋がハッキリと示される稀有な者もいれば、まるでその曲がSNSの付属品のように扱われ、すぐに名を消す者も少なくない。



24KGoldnは、彼の才能と人気はたまたま手にしたチャンスによって作り出されたものではないことを証明するかのように、更なるヒット曲を世に送り出した。それが、2020年最大のヒット曲といっても差し支えない「Mood|ムード」だ。同じく若者から厚い指示を集めるラッパー、イアン・ディオールを迎えたこの曲は、爽やかなギター・リフが特徴な楽曲で、メロディアスな楽曲を得意とするゴールデンに打って付けの一曲だった。見事、「Mood|ムード」はビルボードのシングル・チャートの首位を獲得しただけではなく、ロック&オルタナティブ・チャートでも同じく1位をマークし、ジャンルを超越した彼のヴァーサタイル(多才)な魅力を証明した。



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