セイント・ヴィンセントが語る刑務所を出た父親との絆、70年代ロックが持つ「癒し」

セイント・ヴィンセント(Photo by Erik Carter for Rolling Stone)


レコードの雰囲気は「落ちぶれた暮らし」

プリンスを思わせる快活なオープニング曲「Pay Your Way in Pain」から、バックアップシンガーのリン・フィッドモントとケニア・ハサウェイ(R&B界のレジェンド故ダニー・ハサウェイの娘)によるコーラス部でのクルーニングも印象的なブルージーかつジャジーなタイトル曲まで、『Daddy’s Home』の作風は実に多様だ。「バックコーラスを他の人にやってもらったのは今回が初めて」。クラークはそう話す。「ダブリングやハモリを全部自分でやると、どうしても完璧さを求めてしまう。今回のアルバムはもっとルーズで、生のパフォーマンスに重点を置いている」

彼女が今作の方向性を定めたのは、パンデミック前にプロデューサーのジャック・アントノフと共に、ニューヨークでスタジオ入りした時だった。「ジャックと一緒にエレクトリック・レディ・スタジオの通路を歩いてた時、彼にこう言った。『ダウンタウンでの落ちぶれた暮らし、そういう雰囲気のレコードにしたい』」。彼女はそう話す。その直後、アントノフはスタジオにあったウーリッツァーを使って、かつての輝きを失った後年のスターを思わせる「At the Holiday Party」を生み出した。「私のイメージ通りで、まさにって感じだった」。彼女はそう話す。「温かみとニュアンスがあって、何かを強く喚起するようなサウンドが欲しかったから」



本作の主な舞台はニューヨークであり、過去数作でも言及されていたうらぶれた謎の友人Johnnyが「Bowery John」として登場してもいるが、クラークが1年のうち何カ月かを過ごすロサンゼルスにも焦点を当てている。サイケデリックな「The Melting of the Sun」では、ジョニ・ミッチェルやマリリン・モンロー等、エンターテインメント業界に翻弄された女性たちに想いを馳せる。「多くの人間が、都合の悪い真実について語ろうとする彼女たちを黙らせようとした」。クラークはそう話す。「(あの曲は特に)逞しく、才能ある女性アーティストたちへのラブレターという意味合いが強い。彼女たちは皆、様々な困難や障害が存在するこの世界で生き残ってみせた」

生命と喪失感に満ち、バックコーラスとブラスセクションが彩る『Daddy’s Home』をステージで再現する方法について考えながら、彼女はツアーに出られる日を心待ちにしているという。「前作とそのツアーは、マルチメディアをふんだんに活用したものだった」。彼女はそう話す。「(今回は)単に演奏を楽しむつもり。派手な演出は一切なしで、一流のミュージシャンたちがスリリングなプレイを披露するの」

From Rolling Stone US.




セイント・ヴィンセント
『Daddy’s Home』
2021年5月14日(金)リリース
税込価格:3,300円
日本盤は歌詞対訳・解説付き、
ボーナス・トラック「NEW YORK FEATURING YOSHIKI」収録
試聴/購入:https://virginmusic.lnk.to/TMOTS

Translated by Masaaki Yoshida

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