1000億ドル超えも間近? ユニバーサル・ミュージック・グループの企業価値とは?

それから2年がたち、パンデミック下でもストリーミング収益は伸び続け、それと並行してUMGの評価額も上昇した。3月の初めに公開されたアナリストレポートのなかでモルガン・スタンレーのアナリスト、オマール・シャイフ氏とパトリック・ウェリントン氏は、UMGの「公正な価値」はおよそ490億ドル(約5兆4200億円)であると示した。これは、UMGの2020年のEBITDA(訳注:税引前利益に支払利息と減価償却費を加えて算出される利益)の約29倍の17億ドル(約1880億円)、UMGが2021年に達成するとモルガン・スタンレーが推定する数値の23倍にあたる。

だが、ここでまたカーヴェン氏はすべての業界関係者の先を行く。2月に公開されたアナリストレポートのなかで彼は、UMGの企業価値は400億ユーロ超だと長年主張してきたものの、それをさらに推し進める覚悟だと語ったのだ。「我々は、(UMGのブランド価値を踏まえて)1000億ユーロ(約12兆9800億円)という評価額を提示しました」とカーヴェン氏は言う。1000億ユーロという金額は、テンセント主導のコンソーシアムによって定着した評価額のおよそ3倍に等しい。

カーヴェン氏の極めてポジティブなUMGの評価額は、世界中の「数十億人もの(音楽ストリーミング)サブスクリプション利用者」の将来性という信念に支えられているところが大きい。現時点では、およそ4億5000万人がこうしたサービスを利用しており、Spotifyのような企業が「イノベーションのサポートによって」今後サービス料金を「値上げする」ことも予測される。

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さらにカーヴェン氏は、ストリーミングサービス各社による「新興市場での初マネタイゼーション(貨幣化)」(その代表例として、Spotifyはサービス対象地域を80以上の新しい国と地域に拡大)のみならず、ソーシャルメディアやフィットネス用アプリケーション(2020年12月の記事で紹介)を対象とした音楽事業にさらなる収益化のポテンシャルが潜んでいることを指摘した。全体的な傾向としてカーヴェン氏は、「トラフィックを生み出し、もっと規模が大きくて価値のあるエコシステムとのエンゲージメントを図り、支援できる音楽の力を踏まえると、プレミアムの一点集中の可能性がある」とも指摘する。平たく言えば、iPhone、Facebook、TikTokの次に来るものが何であれ、そうしたものは必ず音楽を必要とするし、音楽を使用するためにはUMGに金を払わなければいけないということだ。

Translated by Shoko Natori

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