1000億ドル超えも間近? ユニバーサル・ミュージック・グループの企業価値とは?

テイラー・スウィフトは、UMG傘下のレコード会社と契約を交わした数多くの人気アーティストのひとり。(Photo by Evan Agostini/Invision/AP Images)

米アナリストたちは、世界各国にレコード会社とライセンシーを展開する世界最大の音楽企業ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)の企業価値が実際には現在公開されている数値の3倍になる可能性を暗示した。

ここのところ、音楽業界はなんだか退屈だ。大金が動く原盤権の売買騒動と、Clubhouseやデジタル資産NFT(非代替性トークン)のポテンシャルに関するマニアたちの噂話を除いて、音楽業界はいま、(まるで私たちのように?)奇妙な停滞状況に置かれている。

もちろん、その原因の大半はライブ興行の不在はもちろん、大手レコード会社が比較的静かにしている点にある。テイラー・スウィフトやBTSといった一部のメジャーアーティストの例外はあるものの、アデル、ケンドリック・ラマー、ブルーノ・マーズ、エド・シーラン、カーディ・B、ドレイク、カニエ・ウェスト、トラヴィス・スコット、リアーナといったスーパースターの多くはパンデミック中にアルバムをリリースしておらず、まったく消息不明だ。ライセンシーを展開する世界最大の音楽企業ユニバーサル・ミュージック・グループ(以下、UMG)の純利益がおそらく支出の減少によって2020年に急伸したのも無理はない。だがこれは、嵐の前の静けさなのかもしれない。

ひょっとしたら、ここ数年でもっともビッグな音楽業界ニュースが私たちを待ち構えていて、それは私たちの予想を超えるクライマックスを迎えるかもしれない。今年の2月、UMGの親会社の仏メディア大手ビベンディは、UMGのスピンオフと株式60%を株主に売却し、年内にオランダのアムステルダム証券取引所で上場する計画を明らかにした。この計画を実行するかどうかという最終判断は、3月末に期日を迎える(答えはどう考えても「イエス」に決まっている)。となると、上場企業としてのUMGの企業価値はどれくらいだろう?

現時点でその回答は、中国のネット大手テンセント・ホールディングス(騰訊)が主導するコンソーシアム(企業連合)が2度にわたる取引の結果、UMGの出資比率を20%に引き上げたという事実から導き出すことができる。これによってUMGの企業価値は、1月の時点で300億ユーロ(約3兆9000億円)となった。この評価額は、アムステルダムでの上場に向けて投資家たちの関心を集めるための「最低ライン」だと、ビベンディは述べた。

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業界関係者のなかには、テンセントが素晴らしい買い物をしたと考える人物もいる。英国ロンドンに本社を構えるJPモルガン・カザノブ(訳注:米・総合金融サービス会社JPモルガン・チェースと英・投資銀行カザノブのジョイントベンチャーとして誕生した会社)の欧州メディア&インターネットエクイティリサーチ部門の責任者ダニエル・カーヴェン氏もそのひとりで、UMGの企業価値は440億ユーロ(約5兆7000億円)超だという彼の発言は、2019年2月に各メディアによって大々的に取り上げられた。カーヴェン氏は「IT大手にとって戦略的であると同時に複製が不可能な、アンダーマネタイズされた必携のグローバルコンテンツ」をもとにこのように見積もったと語る。UMGの企業価値を290億ドル(約3兆2100億円)から420億ドル(約4兆6500億円)程度と予測した米モルガン・スタンレーをはじめ、当時のほかのアナリストたちと比べてカーヴェン氏の予測はとくに強気なものだった。

Translated by Shoko Natori

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