マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン再始動、シューゲイザーの伝説を今こそ紐解く

混乱を超えた先の希望

もちろん、これまでにはなかったような新たな試みもある。ショートディレイがかかったような、荒々しいドラムとディストーション・ギターが絡み合う、例えるなら(ケヴィンも参加した)『XTRMNTR』期のプライマル・スクリームのような「In Another Way」、まるでジェット機の噴射口にいるような、フランジャー・ドラムが圧巻のドラムンベース「Wonder 2」といった楽曲では、E-Bowが大活躍したという。

「プライマル・スクリームのライヴでも使っていたんだけど、おもしろいテクニックを編み出したんだ。イーボウで、サウンドをキープしたまま、弦に触ってこんな風にスライドして動かす。 そうすると、こういった『ヒュ~~~~!』って音が出るんだ。新作ではかなりE-Bowを使っているよ。 バグパイプみたいに聴こえる音(『In Another Way』のイントロ?)もE-Bowだし、『wonder 2』の音もみんなE-Bowだ」
※『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』ケヴィン・シールズ



レコーディングからミックス、そしてマスタリングまで全てのプロセスにアナログ機材を通した生々しいサウンドも、本作の大きな特徴の一つ。ギターの繊細なニュアンスを再現した、ふくよかで温かみのある中高域をはじめ、どの曲も隅々からバンドの「体温」が伝わってくる。当時ケヴィンが本作について、「これまでになく心のこもったレコード」と話していたことを思い出す。

「もしかしたら“empathy(共感、思いやり)”という言葉がしっくりくるのかも知れない。その言葉が全編を貫いているような気がするね。説明するのが難しいのだけど、“spiritual”とは少し違う。だけど、みんなで共有できる感覚というか……万人に共通する感情みたいなものが、サウンドに込められた気はしているよ」
※2021年 公式インタビュー ケヴィン・シールズ

今年3月中旬に行ったケヴィン・シールズへの公式インタビューで、彼は『m b v』を「『混乱を超えた先の希望』について描いたアルバムであり、2013年のリリース当時よりも今の方が、多くの人にそのテーマも伝わるのではないか」と語っていた。リリースから8年が経ち、新型コロナウイルスの感染拡大により世界中が混乱状態となっている今こそ、『m b v』の持つポジティブなヴァイブレーションが必要とされるのではないだろうか。

【関連記事】ケヴィン・シールズ日本独占インタビュー マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが提示する「新たな音響体験」の真相



マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン

配信URL
Spotify:https://smarturl.it/mbv-Spotify
Apple Music:https://smarturl.it/mbv-AppleMusic

新装盤CD/LP
2021年5月21日世界同時リリース
国内盤:高音質UHQCD仕様/解説書付

【画像を見る】国内盤CD/LP+Tシャツセットの商品一覧

商品詳細:
『Isn’t Anything』
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11779

『loveless』
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11780

『m b v』
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11781

『ep’s 1988-1991 and rare tracks』
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11782

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