もちろん、これまでにはなかったような新たな試みもある。ショートディレイがかかったような、荒々しいドラムとディストーション・ギターが絡み合う、例えるなら(ケヴィンも参加した)『XTRMNTR』期のプライマル・スクリームのような「In Another Way」、まるでジェット機の噴射口にいるような、フランジャー・ドラムが圧巻のドラムンベース「Wonder 2」といった楽曲では、E-Bowが大活躍したという。
「プライマル・スクリームのライヴでも使っていたんだけど、おもしろいテクニックを編み出したんだ。イーボウで、サウンドをキープしたまま、弦に触ってこんな風にスライドして動かす。 そうすると、こういった『ヒュ~~~~!』って音が出るんだ。新作ではかなりE-Bowを使っているよ。 バグパイプみたいに聴こえる音(『In Another Way』のイントロ?)もE-Bowだし、『wonder 2』の音もみんなE-Bowだ」 ※『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』ケヴィン・シールズ
今年3月中旬に行ったケヴィン・シールズへの公式インタビューで、彼は『m b v』を「『混乱を超えた先の希望』について描いたアルバムであり、2013年のリリース当時よりも今の方が、多くの人にそのテーマも伝わるのではないか」と語っていた。リリースから8年が経ち、新型コロナウイルスの感染拡大により世界中が混乱状態となっている今こそ、『m b v』の持つポジティブなヴァイブレーションが必要とされるのではないだろうか。