マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン再始動、シューゲイザーの伝説を今こそ紐解く

マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(Photo by Paul Rider)


大変貌を遂げた初期EP、トレモロ・アームの革命

1988年、ジーザス&メリーチェインやプライマル・スクリームらが所属し、後にオアシスを見出すアラン・マッギー主宰のレーベルCreation Recordsに移籍し、1st EP「You Made Me Realise」をリリースすると、これまでの作風からさらに大きな変貌を遂げる。暴力的なフィードバック・ギターと機関銃のような激しいドラム、儚げで官能的なメロディを融合させることによって、一気にシーンの最前線へと躍り出たのだ。

表題曲「You Made Me Realise」は、今もライブのラストを飾る代表曲の一つである。終盤のノイズパート(メンバーたちは「ノイズ・ビット」と呼んでいる)は、ステージでは10分以上にもわたって繰り広げられ(筆者が海外で観たライブでは、30分に及ぶ時もあった)、あらゆる感情や思考を吹き飛ばされるようなその凄まじい体験は、事前に配布される耳栓と共に、彼らのライブを語る上で欠かせないエピソードとなっている。



また、「Slow」の重たいリズムやパーカッシヴなメロディには、初期パブリック・エナミーにおけるボム・スクワットのプロダクション・ワークからの影響も見てとれる。それをソニック・ユースやダイナソーJr.ら、USのバンドからインスパイアされたノイジーかつパンキッシュなアレンジに変換させるなど、誰も思いつかなかったアイデアを次々と具現化していくことにより、ライドやラッシュ、ペイル・セインツ、 チャプターハウスといった、後に「シューゲイザー」と呼ばれるバンドたちの「雛形」にもなった。

何より衝撃的だったのは、ギターのトレモロ・アームを持ったままコードをかき鳴らし、変調させるケヴィンの演奏スタイルだ。そこに「リヴァース・リヴァーブ」と呼ばれる逆回転に似たエフェクト処理や、変則チューニングの響きなどを組み合わせた時空が歪むようなサウンド(グライド・ギター)は、これまで誰も聴いたことのないものだった。

「50年代以降、チャック・ベリーを初め数々の有名なギタリスト達が素晴らしい手法でトレモロアームを使用してきたけど、大半のトレモロアームは80年代製のモダンかつ洗練されすぎた音色が出るから、特に惹かれもしなかった。ところが、 83年頃にある友達からフェンダー・ジャズマスターを強く奨められてね。(中略)それで弾いてみたら、他のギターとは明らかに違うトレモロアームのサウンドにとても感銘を受けた。まるでテープの速度を調整できるような感じで。凄く面白くて、すっかり夢中になってしまったんだ。それが EP『You Made Me Realise』に収録した『Slow』だよ」
※「CROSSBEAT」2012年8月号 ケヴィン・シールズ

2nd EP「Feed Me With Your Kiss」は、表題曲が後にリリースされる1stアルバム『Isn’t Anything』に収録されるなど、「先行シングル」的な性格の強い作品である。疾走する強迫観念的なドラムの上で、ビリンダとケヴィンが交互にリードを歌うFeed Me With Your Kiss」は、執拗に繰り返されるハードコアなギターリフも含めて淫靡でおどろおどろしく、それでいてユーモアも感じさせる。

「男女ボーカルの掛け合いなんて、すごくトラディショナルでナンシー・シナトラの時代の曲みたいだよね(笑)。それでいて曲のアティチュードはバースデイ・パーティ的でもある。ちょっと笑えるヘンな曲ではあるけど、『遊び心』のある曲に仕上がったかなと思ってる。決して懐古主義的な曲ではないよ。おそらく1985年かそれ以前に僕らが聴いていた音楽からの影響が入っているけど、サウンド的なアプローチは新しい。まあ、割と気軽に出来てしまった曲ではあるね」
※2021年 公式インタビュー ケヴィン・シールズ

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