アーティストの不満を解消? Spotifyがロイヤリティについて解説する新サイトをオープン

ストリーミング時代にアーティストとして活動することは、いくつかの矛盾を受け入れることでもある。多くのデータが示すところによると、音楽業界の売上は2000年から2010年代初頭にかけて著作権侵害やデジタルダウンロードなどの影響で減少していたが、その後は大幅な回復を見せており、昨年は122億(約1兆3200億円)という収益を記録した。だが、音楽業界がキャッシュをかき集める一方、ストリーミングサービスを利用しているアーティストのほとんどは、その恩恵を感じていない。

アーティストたちは、自作の楽曲がストリーミングプラットフォームで数百万回再生されてもごくわずかなロイヤリティしか払われないことに度々不満を漏らしてきが、Spotifyが立ち上げた新サイトは、1再生あたりのレートは重要な物差しではないと主張する。定額制の場合、レコードショップやiTunesの時代と違ってリスナーは楽曲単位で購入しないからだ(当然ながら、すべては全体の収益と月の再生回数の割合次第なので、再生回数だけをとって金銭的価値を算出することは不可能)。「自作の楽曲が数百万回再生されるのは本当に素晴らしい。それは賞賛に値する偉業です」とヘルマン氏は言う。「それに私たちは、いままで55万1000回こうした偉業が達成されたことを祝うべきです。数多くの楽曲がこうした成功を勝ち取っているのです。これは実に素晴らしいことですが、そこにいたる前後関係をアーティストにしっかり説明することも重要です」

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ヘルマン氏は次の点も承知している。「一定の再生回数が売上となり、プラチナディスクやゴールドディスクといった評価に結びついていた過去の一部業界では、(アーティストとしての)頂点がどのようなもので、レベルごとの違いが何かをイメージすることができました。しかしながら、ストリーミング再生回数となると現在のアーティストが自身の立ち位置を見極めるのはかなり困難です」

定額制のストリーミングサービスによる収益分配方法は、近年の音楽業界において極めて重要な問題だ。2021年3月、SoundCloudは一部の独立系アーティストに対して従来のプロラタモデルではなく、リスナーのストリーミング再生回数に応じてロイヤリティを支払うと発表して物議を醸した。その一方、一部の音楽エグゼクティブは、これによって透明性がもたらされ、再生回数の少ないアーティストや楽曲に新たなバリューが生まれると、SoundCloudの判断を歓迎した。

音楽業界全体を対象とした検査なしにユーザー重視のストリーミングモデルがアーティストの生活に与える影響を明確にすることはできないが、Spotifyが自社のユーザー重視モデルを検証した結果、「中堅クラスのアーティストや新進気鋭のアーティストに関しては、私たちの多くが期待していた劇的なシフトは見られなかった」と、ヘルマン氏は述べる。それは、気軽にストリーミングを楽しむリスナーの多くは、もっとも人気のコンテンツを消費する傾向があるからだ。だが、「音楽業界がその方向に進むのであれば、私たちも柔軟に変化に対応していくことは間違いありません」と氏は言う。

透明性を追求するためにSpotifyが立ち上げたLoud and Clearが現在のストリーミングビジネスに対するアーティストの怒りをどれだけ和らげられるかは、いまのところわからない(その間、本誌はTwitterなどを通じてリアルタイムな反応をチェックする)。

From Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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