小泉今日子、筒美京平からの宝物を披露したアコースティックライブ

そんな記念すべき夜、最初にどの曲を唄うのか。まずは呼吸を整えるように鳴り出したのはシェイカーの音。心地よく波打つリズム。そしてコーラス「Don’t you cry, never mind, don’t you cry, never mind..」。その曲は、1984年のアルバム『Betty』(全曲の作曲を筒美さんが手がけた)に収録されたひそかな人気曲「今をいじめて泣かないで」だった。アコースティックなアレンジが、2021年の彼女にやさしくフィットする。銀色夏生さんが歌詞で描いた十代の女の子の心の揺れも、この不安な時代に暮らすいろんな人たちにかけてあげたい言葉みたいに思えてくる。次の「Kiss」もシングル「水のルージュ」(87年2月)のB面曲。この冒頭の2曲は長年のファンにはうれしいプレゼントだし、ヒット曲を中心に彼女を知っている人にはかなりのサプライズでもあったはず。


Photo by Takao Iwasawa

続けて「魔女」を歌った彼女は、筒美さんが手がけたヒット曲の数々を「宝物」と表現し、「一緒に歌ってくださいね」と画面の向こうに呼びかけて、めくるめくヒット曲が並ぶ“粋なメドレー”がはじまった。「水のルージュ」「まっ赤な女の子」「半分少女」「迷宮のアンドローラ」「ヤマトナデシコ七変化」……、そして熱くなってきたタイミングで「なんてったってアイドル」。「Yeah!」のシャウトにあの頃の小泉今日子の姿がダブる。「なんてったってアイドル」を唄い終えると、呼吸を整えるように「何十年ぶりでしょうか? アイドルは、やめられない?」とMCして照れ臭そうに笑った。

Rolling Stone Japan 編集部

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