岡林信康がぶっ壊そうとした「フォークの神様」のレッテル



田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」岡林信康特集Part3。今週はコロンビア・ビクター編、1975年のアルバム『うつし絵』から、1981年のアルバム『GRAFFITI』までの時代をたどってみました。流れているのは、この番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」です。

わずか6年で発売したアルバムは6枚、演歌からポップス、洋楽、ニューウェーブと、いずれもフォークの神様のレッテルから逃れたい、ぶっ壊したいということが原動力になって、フォークじゃない音楽に真正面から向かっていった。でも、ファンの反応は芳しくなかったという時代です。改めて岡林さんの特集をしていて思い出す言葉があるのですが、1960年代の終わりから1970年代に「自己否定」という言葉がしきりと使われたんですね。今の自分を否定して新しい自分になっていく、岡林さんのこの頃の活動はまさに自己否定でしたね。そして、もし、フォークの神様という言葉に安住するような人だったらこんな音楽はやっていなかったでしょうし、今の岡林さんもないと思うんです。そこから逃れようとし続けたから、岡林信康は岡林信康として今回のアルバム『復活の朝』のようなすべてを濾過した透明で素直なアルバムができたんだと思います。よくファンがアーティストを作るという言い方をします。神格化するのも否定するのもファンですが、その両方がいたから岡林信康は岡林信康として今を迎えているのではないか。こういうファンとアーティストの関係があるんだな、と思いました。今回のアルバムは色々な時代のファンを納得させる、初めてのアルバムと言ってもいいかもしれません。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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