第63回グラミー賞総括 女性アーティストが主要4部門を独占し、ビヨンセがグラミー史に名を刻む

当然ながら、新型コロナのパンデミックによって2021年のグラミー賞授賞式は例年とはかなり違うものになった。授賞式のオーディエンスは主要部門にノミネートされたアーティストのみで、彼らはカリフォルニア州ロサンゼルスのステープルズ・センター近くの屋外スペースに設置されたテーブル席にソーシャルディスタンスを保ちながら着席した。それでも、昨夜の授賞式にはいつもと変わらない点もあった。平時であっても、グラミー賞は実際の受賞の場面に30分以上を割くことはなく、残りの3時間もパフォーマンスでぎっしり埋められている。

それでもはやり、今年の授賞式は無駄のないすっきりとした印象を与えた。お決まりの「グラミー・モーメント」という、ときには感動的だが、総じてヤラセっぽい退屈なコラボ演出もなく、ノミネートされたアーティストに焦点が当てられる一方、実際のオーディエンスがいないことで親近感のあるパフォーマンスとなった。

授賞式は、コメディアンのトレバー・ノアによるテンポの良い独白でスタート。続いて、会場にいるハリー・スタイルズ、ビリー・アイリッシュとフィニアス・オコンネル、バンドのハイムといったアーティストのパフォーマンスが繰り広げられた。広々とした美しい空間がその夜のメインステージとなり、最終的にはアーティストがほかのアーティストのためにパフォーマンスを披露するユニークな場となった。バッド・バニーはジャイ・コルテッツときらびやかなステージで「Dákiti」を披露した後、ステージの脇に腰を下ろし、デュア・リパが『フューチャー・ノスタルジア』の豪華絢爛なメドレーを繰り広げるのに合わせてメロディをそっと口ずさんだ。

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授賞式には事前に収録されたパフォーマンス映像もいくつか含まれていたものの、プロダクション全体はスムーズな印象を与えた。テイラー・スウィフト、ジャック・アントノフ、アーロン・デスナーは手の込んだセットを舞台に『フォークロア』の楽曲を披露し、ダベイビーはダイヤを散りばめたようなグローブをはめ、バイオリニストと連邦最高裁判所の判事のようなローブ姿のバックコーラスを携えてロディ・リッチと「Rockstar」を披露した。キラー・マイクと活動家のタミカ・マロリーとともに警察による暴力を非難するリル・ベイビーのプロテストソング「The Bigger Picture」のパフォーマンスは、とくに胸に迫るものがあった。

ミッキー・ゲイトンは、カントリー部門で初めてグラミー賞にノミネートされた黒人女性として歴史を刻んだ(ヴィンス・ギルが最優秀カントリー・ソロ・パフォーマンスを受賞したため、受賞は逃した)。ゲイトンによる美しい「Black Like Me」のパフォーマンスによってカントリー部門のパフォーマンスが幕を開け、ミランダ・ランバートが「Bluebird」を披露した。ジョン・メイヤーをギタリストに迎えたマレン・モリスの「Bones」がカントリー部門のトリを飾った。

その後、ポスト・マローンが息をのむほどスタイリッシュなステージで「Hollywood’s Bleeding」を披露し、ドージャ・キャットがヒット曲「Say So」で観る人を未来へと誘う。BTSは韓国・ソウルの屋上から「Dynamite」を披露した。ラストを飾ったのはロディ・リッチ。新曲「Heartless」を初披露し、大ヒット曲「The Box」で締めくくった。

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追悼コーナー「イン・メモリアム」では、ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークのシルク・ソニックがリトル・リチャードの「Long Tall Sally」と「Good Golly Miss Molly」を披露し、故人を偲んだ。ライオネル・リッチーは、友人ケニー・ロジャースとブランディ・カーライルとともにカントリー・フォークシンガーのジョン・プラインが生前最後にレコーディングした楽曲「I Remember Everything」を歌った。アラバマ・シェイクスのブリタニー・ハワードとコールドプレイのクリス・マーティンによる感動的な「You’ll Never Walk Alone」によってイン・メモリアムは幕を下ろした。1945年のミュージカル『回転木馬』のために作曲された同楽曲を有名にしたのがジェリー&ザ・ペースメイカーズだ。バンドのフロントマンのジェリー・マースデンは、2021年1月に他界している。

Translated by Shoko Natori

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