Gotchが語るシーンの越境から手に入れたもの、音楽を未来につなぐためのトライアル

自由度を広げた「ソウルメイト」との関係

―後藤さんのバンドには、下村さんと井上さん(Turntable Filmsの井上陽介)が全作参加しています。各々のバンドでは全く異なる音楽をやっていますが、この2人は後藤さんにとってどんな存在ですか?

Gotch:よく一緒にいますから、ソウルメイト的な感じですね。それぞれ興味を持っているものは違うけど、音楽の話や機材の話とか、シェアしているものはすごく多いし。お互い影響を与えあっていると思います。mabanuaもそのグループに入るかもしれないですね。彼が作ったスタジオにも僕が紹介したエンジニアからの機材の知恵が流れ込んでいると思うし。新しい発見があったら、mabanuaとも早いうちにシェアしてます。そういう話をする仲間って感じですね。




―仲間内でシェアしている音楽や、録音やミックスなどのアイデアを実現させているプロジェクトというか。

Gotch:そうそう、ある種のラボみたいなところもあるかもしれないですね。ここ数年でたくさんあった音響的な発見を共有してます。「この曲はサビに行ったら、低音が無くなってるんじゃなくて、もっと低いところで鳴ってるんだ!」みたいなローエンドのことで驚いたりとかね。それは環境を整えないと聴こえないので、僕らの界隈はしっかりしたスピーカーとルームチューニングで聴きましょう、みたいなところに向かっていますね。

―今回のアルバムで、そのラボでのトピックって何かありますか?

Gotch:初めて自分でミックスしたことですかね。最終的な作業はエンジニアと一緒にしましたけど、当初はすべて自分の手でミックスする予定で始めたんです。ゆえに楽曲のアレンジを他のメンバーに委ねたところがあるというか。井上くんやシモリョーに「今回はミックスに時間とエネルギーを割きたいから、俯瞰的な目で見ていおいてほしい」とオファーを出して。アレンジも2人に振ったり、そういう意味ではなるべく自分の身体から作曲を離したのはありますね。ミキシングの段階では自分の意志をがっつり入れるけど、それより前の段階まではかなり委ねています。

―ミックス以外で、自分でやったところはどこですか?

Gotch:メロディとコード進行、ゆるいビートまでのデモは作って渡しました。あとは自由に広げてほしいって感じで。だから、「そこを差し変えるのか?」と驚くところもありましたね。「Eddie」はホーンアレンジをしたデモを渡したのに、そのホーンがまるっと80sっぽいシンセに置き換わって返ってきたりして。でも、そっちの方が面白いからそれでいいよって。



―これまでのアルバムと全くアレンジが違うのは、制作プロセスの違いも大きいんですね。

Gotch:そうですね。自由度が高いのはリモートワークの延長にあるからだと思います。それぞれが自宅でしっかり揉んで、ファイルのやり取りのなかで構築できるし、それをバンドに戻して再現する形だったので、そのプロセスがバラエティを広げているかもしれないですね。

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