aikoが語る、日常を歌にするまでの過程「絡まった洗濯物は好きという気持ちと同じ」

aikoが語るアレンジの秘密

—まず、オープニングナンバー「ばいばーーい」の歌詞のインパクトが強くて、作品全体のイメージがこの曲に引っ張られそうになるぐらいでした。これを1曲目に据えた理由はなんでしょうか? 

「ばいばーーい」はトオミヨウさんにアレンジしていただいたんですが、音が上がってきたときに「これを絶対、1曲目にしよう」と思って。1曲目が決まると「メインが決まった」みたいな感じがあるんですよね。あと、「いつもいる」という曲が出来たときに、スタッフが「この曲を最後にしよう」と言ってくれて。まず最初と最後を決めて、あとは流れを考えながらパズルしていきました。

ー「ばいばーーい」は恋人と別れた女性が新しい人生に進んでいく決意を描いていて、「いつもいる」は、“出来るだけ気持ちを伝え合って、いっしょにいよう”という気持ちが伝わる楽曲。この2曲が最初と最後にあることで、「人はいつか一人になるけど、だからこそ好きな人を大事にしながら生きていきたい」というストーリーが伝わってきました。

曲順を決めるときは意識してなかったけど、私も最近、そういうふうに思ってますね。若い頃は「永遠ってある」と思ってたけど(笑)、だんだん「いや、そんなことないな」と実感するようになって。「限りがあるからこそ、今をどれだけ楽しめるかを考えよう」とか「たくさん笑うことが大事」とか、20代のときはわからなかったので。

—今の話は、「どうしたって伝えられないから」というタイトルにもつながっている気がします。

アルバムのタイトル、いつもめちゃくちゃ難しいんですよ。全部をまとめて一つの言葉にするのってプレッシャーがあるんですけど、今回は曲が出揃ったときに「伝えられなかったことを歌にしているな」と思って。歌詞の一節をタイトルにする案もあったんですけど、なかなかピンとこなくて。スタッフの勧めもあって、「どうしたって伝えられないから」に決めました。

ーどんなに伝えたいと思っても、全てを伝えることはできないですからね。

そうなんです。自分の気持ちが相手に100%伝わることはないし、相手の気持ちを100%共有できることも絶対になくて。それが歯痒いなと思うときもあれば、「わからないからこそ、もっと知りたいと思ったんだな」ということもあって。そういういろんな感情が混ざって、このアルバムになってる気がしますね。

—伝わらないからこそ、歌にするのかも。

そうだと思います。今回のアルバムは去年書いた曲がけっこう多いんですけど、「いまだにムカつくと歌詞を書きたくなるんだな」って思ったり、酔っぱらって泣きながら歌詞を書いてたこともあるので(笑)。


Courtesy of PONY CANYON

—アレンジに関しても聞かせてください。aikoさんの楽曲アレンジは作品を重ねるごとに少しずつ変化してきていますが、どこか「aiko印」と呼ぶべき傾向がある気がしていますが、aikoさん自身は考えていますか?

あまり考えてないんですけど、好奇心はあるほうなので、いろんな音楽を聴くのが楽しいって今でも思えてるのが、バランスに繋がっているのかな?と思ったりしますね。

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