細野晴臣の50年間に及ぶルーツ ノンフィクション本とともに読み解く

田家:YMOについてお書きになっている部分では、坂本龍一さんの青春というのもかなり丁寧に追っていらっしゃって。「彼らの時代」であるという本のサブタイトルの証みたいな要素にもなっていましたね。

門間:僕は、YMOは実は今も続いていると思っていて。はっぴいえんどは1985年に再結成ライブみたいなものをされていましたが、YMOは1990年代に再生したり、2000年代もライブを行なったり。

田家:細野さんの50周年の国際フォーラムのライブでも映像使ってやっていましたもんね。

門間:いまだにそうやって顔を合わせる機会があって。そういう意味では、今もYMOから始まる三人の青春時代が続いているようなものだなという感じがしたんです。あの三人の当時から今までというのを僕自身が知りたいし、一つの物語として残しておきたいという欲求になっていたのかなという気はしますね。

田家:なるほどね。YMOは最初の構想とは違ったものの、細野さんが坂本さんに「僕を踏み台にして世界に出ていかないか」と説得した、と272ページにあります。

門間:細野さんはその後に、その通りになったんだと自分を落とすんですよね。オチをつける。そこのユーモアが必ずあるところが、細野さんに人が惹かれていく要因だと思います。

田家:その世界的な成功を果たしたYMOにも陰の部分、反動というものがありました。1980年にワールドツアーを成功させて、レコード大賞のアルバム大賞を獲った後にバンドには深い亀裂が入り、一体感を失っていったと、321ページにあります。

門間:僕も微かに当時のブームを記憶しているんですけど、国民的スターでアイドルに近いような捉えられ方をされる中でメンバーの個を失っていったわけですよね。それがメンバー間の違和感を生むことになってしまって、それはYMOの時代だけでなくてもこの本の中でも焦点を当てざるを得ないと思っていたところです。

田家:YMO解散を正式に持ち出したのは細野である、と361ページに。今だから語られなければならないのは、このYMOの後なんだなと気付かされたのがこの本です。続いて、門間さんが選ばれたのは1989年のアルバム『オムニ・サイト・シーイング』から「プリオシーヌ」をお聴きください。

Rolling Stone Japan 編集部

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