細野晴臣の50年間に及ぶルーツ ノンフィクション本とともに読み解く



田家:この曲を選ばれたのは?

門間:はっぴいえんどの2ndアルバムですけど、元々はっぴいえんどはバッファロー・スプリングフィールドの音楽を志向してスタートして。細野さんがそれを言い出したことなんですけど、そういうサウンド作りを進める中で、実は自分自身の曲作りや歌声に対してどこか居心地の悪さのものを感じていて。それがこの「夏なんです」の時に、自身の曲作りや歌声に開眼したという記念になる曲だなと思って選びました。

田家:書籍の120ページに、「細野は歌うことに自信がなかった。曲作りへの不安も抱えていた」という文章がありましたね。さっき仰った、細野さんへの憧れという中にはっぴいえんどもあったんでしょうね?

門間:やっぱりはっぴいえんどですね。僕は1974年生まれで、1990年代が僕の学生時代に当たるんですけど。1990年代に、おそらくサニーデイ・サービスなどのバンドの登場とともに、はっぴいえんどの再評価があって。どちらが先だったかは記憶が定かではないんですけど、その中で僕も初めてはっぴいえんどにたどり着いて、僕にとっての細野さんのファンとしての原点みたいなものなんですね。

田家:はっぴいえんどにたどり着いたときにはどんなことを思われました?

門間:新しいなと思いました。過去の音楽を聴いているという感覚が全くなかったですね。サウンドもそうですし、歌詞もそうだし、メロディもそうだし。あとはこの「夏なんです」のようなフォーキーなスタイルは、当時の1990年代の音楽と比較しても充分に新しかったです。

田家:なるほど。はっぴいえんどに取材していく中で、これが分かった時にこの本をやった意味があったと思えたということはありましたか?

門間:田家さんのように同時代にはっぴいえんどの音楽を体験されてきた方がいる中、リアルタイムで知らない僕がどうやったら田家さんのような方に納得していただけるものを書けるのか? ということを特にはっぴいえんどに感じていて。ただ、はっぴいえんども、これまで色々な方が分析したり、書かれてきていて。そういう中では、それを参照しながらもそこで触れられていないことは何か? ということを探していました。

田家:それは何だったんでしょう?

門間:はっぴいえんどというのはやはり神格化されているようなところもありますから、それ以外の人間としてはっぴいえんどの面々がどういう関係性を育んでいたのか? そういう部分に興味を持ちました。

田家:細野さん本人を取材する前に、周辺の話や過去の雑誌も調べていたということでしたね。

門間:そうですね。最初は、細野さんが暮らした港区の歴史を遡るところから始めて。実際に1960年代、1970年代の地図を見て、松本隆さんの家も割と近いのでその位置関係を把握するところからやっていました。当時の風景も、僕が細野さんが見たのと同じように見られるところまでなんとかいくところから取材を始めようと思いました。

Rolling Stone Japan 編集部

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