Official髭男dism「Universe」に見る、J-POPとゴスペルの新しい関係性

official髭男dism(Courtesy of ポニーキャニオン)

Official髭男dismがニューシングル「Universe」を2月24日にリリースした。『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』の主題歌としても話題の同曲を、気鋭のライター/批評家・imdkmが考察。

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突然の告白で恐縮なのだけれど、自分はどうやらヒゲダン、つまりOfficial髭男dismのことがやけに好きらしい。レビューの書き出しとしてはほとんどご法度ものだ。でもレビューしようと思って聴けば聴くほど「巧さ」に唸り、またそこからはみでる「腕力」にまた唸る。

このたびシングルとしてリリースされる「Universe」は唸る側の曲だ。すでにダウンロード配信やストリーミングなどで先行配信されていたから、すっかり聴きなじみのある方も多いだろう。『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021』の主題歌にふさわしく、この人気アニメを彷彿とさせる情景や掛詞を折り込む手際。あざとさと紙一重の「巧さ」だ。しかし、力技のワンフレーズがそうした「巧さ」をさらにねじふせて、「巧さ」の一歩先を聴かせてくれる。



具体的には、曲名にもなっている“universe”の一語を高らかに歌うサビの一行――“涙とmistake 積み重ね野に咲く universe”(2度めのサビでは“今日は帰ろう いつの日も野に咲く universe”となって、半音上に転調もしている)。曲名であり、サビであり、さらにキメの最高音域のフレーズに、映画のモチーフでもある「宇宙」という壮大なスケールの一語をもってきているのはあまりにもストレートで大胆だ。なによりそれを「野に咲く」と修飾するのも凄い。たとえて言うなら、足元の草花を眺めていたと思ったら、カメラが180°垂直にティルトして視界が一気に大空へと開けていくかのような。日常的な言語感覚ではぎりぎり意味をとれるかとれないかの凄まじい飛躍が、まさにその飛躍によって説得力のあるイメージを喚起させているのが面白い。飛躍と言えば「野に咲く(移動ドで言うとレドシド)」から「universe(同じくドシド)」でちょうど1オクターブ跳躍するメロディになっているのも同様で、藤原聡の張り上げるような歌唱もあいまって、いかにもヒゲダンといったケレン味を演出している。

巧いだけではあざとく単調に、腕力だけでは持久力を欠いてしまうところが、うまく補完されている。どこまで意識しているのか定かではない、というか多分そういう意識をわざわざしているともあまり思えない。なんでこんなことできるんだろう、ときょとんとした顔になってしまうのだった。

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