ダフト・パンクはなぜヘルメットを被り続けたのか?

ヘルメットを被ることのメリットとは?

遡ること90年代、このデュオはプロモーション出演の際に黒いバッグを頭にかぶり、撮影会では不気味なハロウィンマスクを着用していた。フランス人アーティストの友人がデザインしたロボットのヘルメットに、トーマはカールした茶色のウィッグ、ギ=マニュエルは流れるようなウィッグを着けていた。しかし、ヘルメットを初めて披露した2001年の雑誌撮影の途中、ロボットには禿頭のほうが似合うと判断した2人は、髪を引き抜いてしまった。「よりスマートになったよ」とトーマは振り返る。

現在、彼らはいくつかの異なるバージョンのヘルメットを所有している。エアコンや通信システムを内蔵したライブ用のものもあれば、撮影に適した素材で作られたものもあるし、2006年にダフト・パンクが監督を務めたトリッピーな長編映画『エレクトロマ』のために作られたものもある。

トーマによると、最新のヘルメットは「スパイダーマンの最新作を手がけた」ハリウッドの特殊効果チームが製作したものだという。彼はダフト・パンクのことをアートとマス・プロダクションを融合させたアンディ・ウォーホルに例えているが、このデュオはウォルト・ディズニー・カンパニーやコカ・コーラといった知財を守る多国籍企業にも似ている。自家製のロボット・ヘルメットはオンライン上で増殖し、ファンサイトでモデルにされたり、eBayで売られたりもしている。「しかし、写真を見ただけでプロポーションを揃えるのは本当に難しく、どれも少しズレているように見える」とトーマは語る。

太陽が沈もうとしているなか、ダフト・パンクはスタジオを出て、ブロック下のカフェでエスプレッソを飲み、地下鉄に降りて待合列車に乗り込む。車内は4分の3が満席で、誰も(素顔の)2人を気にかけてはいない。アメリカの有名ミュージシャンと一緒にニューヨークの地下鉄に乗るなんて想像できないだろう。彼らは無名のアイコンなのだ。

「マスクについて気に入っていることの一つは、近寄ってくる人がいないところだ。忘れられるのはいいことだよ」とトーマは言う。

ただ時折、マイナスなこともあったそうだ。トーマは数年前にイビサ島で、ある男が自分をダフト・パンクだと言い張り、クラブで法外なバー代を巻き上げている場面に出くわしたことがあるという。


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From Rolling Stone US.

Translated by Rolling Stone Japan

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