UK最注目ラッパー、スロウタイが語る悪役の素顔「音楽は本当の自分を知ってもらう手段」

スロウタイ(Crowns & Owls)


人生最大レベルの危機を乗り越えるまで

―NMEアワードでの出来事を扱っていると思しき「Canceled」には、スケプタが参加しています。彼とはどういった関係で、あの出来事に対処する上であなたをどう支えていたのでしょうか?

スロウタイ:彼は俺の師匠ってわけじゃないけど、「つまんねぇことを気にすんな」って言ってくれるような存在って、誰にでもいると思うんだ。何もかもがうまく行っている時、あるいはその逆でも、自分に対する疑念って誰もが常に抱えていると思う。自分で音楽を作り始める前から、俺は彼のことをリスペクトしてたし、いつか同じフィールドに立ちたいと思ってた。指針になってくれる存在っていうのは必要だよ。自分のことを理解してくれない人間ばかりに囲まれていたら、学んで成長する機会がないからね。

(NMEアワードの後)、俺は色々と思い悩んでた。普段の自分を見失っている時に、周囲の人々からそういう自分を責められると、自信がどんどん削がれていく。俺はこんなの自分らしくないって感じてるのに、「お前はそういうやつだ」って指差されて、自分への疑念がますます深まっていく。俺がそんな状況だった時に、彼はこう言ってくれた。「お前らしくないぜ。これを踏み台にして、よりタフでハードになるんだ。お前の本当の姿を、世界に見せつけてやれ。クヨクヨしてねぇで、いつもみたいに堂々としてろよ。それがロックンロールだし、お前はロックスターなんだ」ってね。その直後に、俺たちは一緒にあの曲を書いたんだ。互いにアイディアを出し合って、深く考えずにただ音を出してると、童心に帰れるのを感じた。俺が何者かは俺が一番よく知ってる、それがあの曲のスタンスだ。他人の考えや意見によって俺の生き方が左右されることはない、誰にも口出しはさせないってことさ。俺はそんなタマじゃないからね。俺は何かを変えたいし、誰かをより明るい未来へと導くような、ポジティブな何かを生み出そうとしてるんだよ。



―デビューアルバムがそれまでの人生の集大成であるのに対し、2作目は半年程度で完成させないといけないと言われますが、そういうプレッシャーを感じたことはありましたか?

スロウタイ:何も包み隠さずに、ありのままのハートとソウルを注ぎ込んでやれば、そんなことは関係ないさ。感じていることを紙に書き出すことで、頭の中がよりクリアになっていくっていうプロセスは、ある種のセラピーみたいなもんなんだ。そこに並んだ言葉にハッとさせられることも多いよ。曲作りも同じで、自分の中にあるものを吐き出す手段なんだ。でもそれが真摯なものじゃなかったら、何の意味もないんだよ。逆に、それが誠意のこもったものであれば、決して間違った方向に行くことはない。手直しを加えるのは簡単だけど、やればやるほどリアルさは失われる。大切なのは、とにかく曲を生み出し続けることさ。俺は洗練されたラッパーなんかよりも、デヴィッド・ボウイやダニエル・ジョンストンみたいな存在になりたいんだ。

―『Nothing Great About Britain』があなたの政治的視点を中心としていたのに対し、『Tyron』はよりパーソナルな内容となっています。両者は互いにどういった関係なのでしょうか?

スロウタイ:ただ単に成長したってことじゃないのかな。ガキから大人の男にね。声のトーンにもそれは現れてると思うし、より成熟したってことなのかもしれない。俺の物の見方や世の中の変化、そういうのは自然に反映されるもんさ。俺に限ったことじゃなく、人生って矛盾に満ちてると思うんだ。ある時には揺るぎない真実だと思えたのに、「あんなものを信じてたなんて、俺は一体何を考えてたんだ」なんて感じるようになったりする。でもっていずれ自分の子供たちに、「お前くらいの年齢だった頃に、俺はこんなくだらないことをやったことがある。自分で自分が信じられなかったよ!」なんて言って聞かせるんだろうね(笑)。俺自身の経験から誰かが何かを学んだり、そんな風に感じてるのが自分だけじゃないんだって気づいてくれたらって思ってるよ。

Translated by Masaaki Yoshida

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