UK最注目ラッパー、スロウタイが語る悪役の素顔「音楽は本当の自分を知ってもらう手段」

影響源はジェイ・Zとエリオット・スミス

―あなたは制作に入る前に作品の方向性を決めるそうですが、『Tyron』は2枚目ではなく3枚目のアルバムと位置付けるべきかも知れないと話しています。ボツにしたのはどういった作品で、なぜ今こういったレコードを作ろうと思ったのでしょう?

スロウタイ:最初は人生の皮肉な部分を表現したかったんだ。前のアルバムは社会の実況解説みたいな感じだったけど、何かの番組みたいに自分がいろんな役を演じるっていうアイディアが前からあった。でも、それにすぐ飛びつくのはどうかとも思ってた。そんな時にロックダウンに入って、大勢の人が俺と同じようにメンタルヘルスの問題を抱えていると知って、架空の世界を構築するよりもずっと重要で、逼迫したトピックがあるって気づいたんだ。



―アルバムを2部構成にしたのはなぜですか?

スロウタイ:俺は人を怒らせたり刺激したりする、ヘヴィなものを作るのが大好きなんだ(笑)でも多分、もっと穏やかなものを作る方が自分には向いてるんだよ。今の俺は以前ほど怒ってないし、ハイプなものじゃなくてソフトな曲を書いて、自分が抱えてる問題について語るほうが自然に思える。人は誰でも、異なる2つの面を持っているもんだからね。

フラストレーションを発散させるような、ハードなものを作りたくなる時だってあるよ。でもテンポだとかリズムだとか、そういうのを表現する方法は限られてる。それに対して、ソフトな曲のアプローチには際限がないんだよ。

―このアルバムを作るにあたって、影響を受けたアーティストはいますか?

スロウタイ:ジェイ・Zだね。意外に思うかも知れないけど、彼のフロウやワードプレイ、デリバリーにはすごくインスパイアされた。叔父がよく聴いてたから、俺は子供の頃から彼のスタイルに慣れ親しんでた。彼の曲って、ソフトなものでさえ怒りに満ちているように感じるんだよ。あと、アークティック・モンキーズのアレックス・ターナーにもすごく影響されてる。トム・ヨークやエリオット・スミスなんかもそうだけど、俺の曲に彼らからの影響はあまり感じられないかもね。俺は別に、そういうアーティストたちのスタイルを真似ようとはしていないから。彼らの話し方、感情を表現する方法、メッセージの伝え方、俺はそういうのに感化されるんだ。バンド形態での音楽にインスパイアされることが多いのは、それが理由なのかもしれない。レディオヘッドの曲の歌詞に「お前は自分の首を絞めてる それが一番辛いところ」っていうのがあるだろ? 俺はあのレベルを目指してるんだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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