常田大希が語る「祈り」の真意

映画「ヤクザと家族」と「FAMILIA」、クリエイティブファーストを根付かせないといけない

―「FAMILIA」が主題歌になってる、映画『ヤクザと家族』についても少し聞かせてください。私も試写で拝見したのですが、すごく素晴らしくて。

常田:そうだね。素晴らしい映画で。

―常田さんから見て、あの映画のどういうところが素晴らしいと感じましたか?

常田:「ヤクザ」という名前が出てくると、ドンパチものをイメージする人も多いと思うんですけど、そうじゃなくて広い意味での家族の映画だなってすごく感じて。そっちに着地させたんだっていうのが、いいサプライズでしたね。

―登場人物はみんなヤクザに関わる人たちだけど、それぞれが抱えている複雑さって、人間にとって普遍的なものでしたよね。

常田:そうそう。結局、人は(立場などでは)変わらないというか。ヤクザを肯定するわけではないですけど。しっかり「人」を描ききれているなと感じましたね。監督の藤井(道人)さんも若いですし(現在34歳)、こんな映画チームがいるんだとも思ったし、そこに絡ませてもらえるのは本当に幸せなことだなと最初から思ってました。撮影クルーも全員若いんですよ。だから本当に、邦画の未来を背負ってる人たちだと思います。

―撮影の今村圭佑さんはKing Gnu「The hole」のMVの撮影も務められていますけど、本当に素晴らしい画を撮られる方ですね。

常田:キーマンですよね。映画カメラマンの美学がしっかり根付いてる感じがする。



―「FAMILIA」のミュージックビデオは藤井道人監督によるもので俳優陣も出演していて、映画の続編のようになっていますよね。

常田:そう、一応そういう構成にはなってます。

―しかも映画の映像を切り出して使うのではなく、撮り下ろしたのがすごいなと。

常田:そういう意味でもちゃんとこだわり尽くせきれたのは、本当にいい経験になりました。本来、結構ありえないことで。しかもそれに本編の役者陣たちが出てくれるっていうのがね。いかにいい映画、チームかということですよね。

―本来映画の中でストーリーを描ききっているはずだから、その続編をミュージックビデオで描くのを許してくれるというのも、なかなかないですよね。

常田:綾野剛や藤井道人を筆頭に、先輩方がしっかりと作品にとってなにがベストかということに本気で向き合い続けてくれた結果だと思います。


Photo by Masato Moriyama

―「SWITCH」(Vol.39/スイッチ・パブリッシング)に掲載されている綾野剛さんとの対談も拝見しましたが、映画に関わる全員が「主」である集団だったという話が印象的で。常田さんが「すべての登場人物を主人公にした物語を新たに作ることもできるんじゃないかと感じた」とおっしゃってましたけど、本当に、登場人物全員が立っていて、しかもそれぞれの背景を細かく説明してるわけではないのに少ないセリフや表情と存在感でそれを描ききっていることに驚いて。きっとすべての人が最高のパフォーマンスをする、自分の意見を言い合う、というその現場の空気や映画の作り方が作品にも表れていたんだろうなって。

常田:そうですよね。映画チームの映画をひとつ作り上げることに向かう姿勢が、すごくいい「バンド」でしたね。俺たちは当たり前のようにクリエイティブファーストでやってきたけど、他の業界でもしっかりとそうやってる仲間たちがちゃんといて、こうやって出会えたのは奇跡的なことだと思う。こういう作り方をもっと根付かせていかないといけないって認識させることが、この映画が勝ち取らないといけないことなんだとも思います。タイアップという形は今までたくさんやってきましたけど、一緒にモノを作るということはこうじゃなきゃなっていうようなひとつの基準になりました。(主演の綾野剛と)深い繋がりがあるというところから始まったからこそ成り立つ座組みではあるんですけど、こういう経験は初めてだったのですごくいい機会になりましたね。

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