常田大希が語る「祈り」の真意

常田大希(Photo by Masato Moriyama)



「人に光をちゃんと提示しないといけないという想いが強くなりました」

―アルバムのテーマとして「祭り」や「弔い」というキーワードが出てきたのは、どのタイミングだったんですか?

常田:今までも「祭り」というものが漠然と好きで。だからKing Gnuのライブの客入れで夏祭りのSEをかけたりもしてたし。祭りの雰囲気がずっと好きだったんですけど、今回はもう一個掘り下げて、本来の祭りの意味から考えてアルバムを作っていきました。

―本来のお祭りの意味、というのを、常田さんはどう捉えているんですか?

常田:死者を祀るというか。本来お祭りというのは、死者を偲ぶ意味合いもあるので。生と死、死の世界みたいなものですかね。

―死者を祀る、偲ぶ曲を書きたいと思ったのは、どういうきっかけからなのでしょう。

常田:最近の情勢とかもそうですけど、俺の個人的な経験としても生と死というものがわりと身近だったので。鮮明に刻まれていること、というか。だから自然とそういうものがテーマになっていきました。

―「白日」を作ったときにおっしゃっていた、地元の友達を亡くした経験というのが、常田さんの中で大きな出来事になっていますか?


常田:そうですね。その時期あたりから――出来事自体はもう少し前なんですけど――そういうものが作品のテーマになってきていたと思います。アルバム全体をそうしたのは初めてですけど。

―その経験が、この2、3年間、ずっと常田さんの表現の片隅にある、というよりむしろ通底しているものなんじゃないかって、King Gnuの作品からもライブで放たれるものからも感じていたことで。

常田:そうですね、うん。

―地元の友人というのは、どういう関係の子だったんですか?

常田:小中の幼馴染。相次いで、連鎖反応みたいに、3人なんですけど。それこそ去年も、著名な方のそういうニュースも目につきましたし。自分自身の境遇があるから、なおさら目につくのかもしれないですけど。

―多かったですね。実際、2020年の自殺者数は前年より増えたということがニュースになっていましたし。その経験の中で、常田さん自身はどういう感情と戦ってきたんですか。

常田:それこそ……なんていうのかな……なにかできることはなかったのか、という想いもありますし。こっち(東京)に出てきてから、そんなに頻繁に会えてたメンバーじゃなかったので、どういう心の動きでそうなっていったのか正確にはわからないんですけど。それと、残された人の視点もあるし。死というものが遠い話じゃなくなった中で、「生」をどう生きるのか、自分自身の生き方を見直すような、そういう心の動きもありました。作るものもそうだし、自分の人生もそうだけど、やっぱり変わりますよね。

―おばあさんが亡くなったのも、時期は近い?

常田:ああ、そうですね。近いですね。


長野から上京したとき、常田はおばあさんの家で一緒に暮らしていた。このMVは当時その家で撮影されたもの

―自身の生き方や作るものが、どう変わりました?

常田:人に光をちゃんと提示しないといけないという想いが、以後はやっぱり強くなりました。人生をポジティブなほうに持っていくようなものを作りたいというのは、ここ数年思っていることですね。

―それは、音楽を作ることで自分に対しても光や希望を見出したいという感覚もある?

常田:音楽に、うん、そうですね。音楽を何十年もやり続けてきた人間なので、音楽に救われてきたとは思ってます。

―「千両役者」には<死から眺めた生の躍動>という歌詞もありますけど、死の捉え方も変わったところがありますか?

常田:よりリアリティが出てきますね。でもだからといって、悲観的になるーーもちろんその時期はなりますけどーー死の切り取り方をそういう視点だけではなくて、子どもの頃にワクワクしたお祭りの感じと言いますか、心が躍る感じをしっかり散りばめようとはしました。あんまり暗いものを作ってもしょうがないので。

―そうですね。まさに、死者を弔い、葬り、自身の人生をちゃんと肯定して、「FAMILIA」というレクイエムで終わる、とても美しい流れのアルバムになっていると思いました。このアルバムと「FAMILIA」という曲を作って、常田さんの気持ちや経験にひとつ区切りをつけられた、という感覚はありますか?

常田:特にそういう位置付けまではいってないんですけど。でも「FAMILIA」は、King Gnuをやってきて今ここにいる歩みの集大成という感じはします。

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