RADWIMPSの軌跡を読む 担当ディレクターが語るバンドとの友情



田家:僕らの方からこの曲に触れないわけにはいかない、ということでこの曲を選んでもらいました。著書の169ページに『FM802のヘビーローテーションに選ばれた、FM802はアーティストとリスナーを愛する活気のある放送局で、今は会長である栗花落さんが語った「DJの役割は楽曲を増幅して伝えること」の言葉通り、曲を何倍にも光らせてくれた』と、書いてあります。

渡辺:RADWIMPSはラジオに育ててもらったという想いが強くて。本人たちは嘘がないままそれを伝えるので、RADWIMPSをそのまま愛してくれて、そのまま伝えてくれる人たちと仕事をさせてもらえれば、お客さんに届くんだな、と思ったんです。FM802の話もそうですし、田家さんの番組なら出させてもらいたい、とメンバーも言うわけで。そういうところに育ててもらった感謝の気持ちが強いですね。愛のあるコメントともに曲を流してくれるから、僕も本当にいい曲だなと思いました。



田家:2006年5月発売、メジャー3枚目のシングル『ふたりごと』。この曲を選ばれたのは?

渡辺:本当は『RADWIMPS 3~無人島に持っていき忘れた一枚~』に入るはずだったんです。それが入らないということで、次のアルバム『RADWIMPS 4~おかずのごはん~』と繋ぐ橋渡しになった曲なので、思い出深くて。

田家:書籍の中で書かれている、レコーディング中のメンバーのやりとりも生々しいですね。

渡辺:最初はそういうのを書かず、メンバーは仲良しで天使のような人たちだという感じで書こうと思っていて。でも、全部伝えないと本当のことが分かんなくなると思ったんです。なぜその後に確執が生まれてくるのかも分からなくなる。

田家:野田さんがそれじゃない、違うのはないか? と、その都度レコーディングスタジオで注文を出して、それに対してメンバーが応えられなくて、泣き出してしまう。それに対して野田さんが灰皿を投げて怒る、と。本当にありのままを書いているんですね。

渡辺:それぐらいの集中力だったし、上を目指そう、良いものを作ろうという意識でやっていたので。そこを隠してしまうと話が繋がらなくなっていくので書き足したりしましたね。本の後半で確執が生まれてくるじゃないですか。

田家:それを書く側の責任とか書くことの恐怖感みたいなものを感じたりしませんでした?

渡辺:うーん。でも、そのくらいの覚悟で音楽に向かっているということが伝わればいいんじゃないかなと思って。メンバーもこの本を読んで同じようなことを言ってくれてたから、感じてくれたのかなと思いますね。

田家:もう一つあったのが、野田さんの歌のモチーフと彼女の存在。彼が自分の彼女をMVに出そうとしたということもあったと。

渡辺:これは初めて書いてしまったことですね。今まではふわっとしていたんですけど、それも書けば、野田洋次郎という人と彼がその後に生み出す確執がもっと分かりやすくなるかなと思ったんです。とにかく、本当のことじゃないと届かないんだ、とずっと横で見てきた僕は思ってきていて。そこまでしないとダメなの? という一番いい例だと思ってます。

田家:野田さんは、家族についても思ったことをそのまま歌にしている方ですよね。『RADWIMPS 2 ~発展途上~』と『RADWIMPS 3~無人島に持っていき忘れた一枚~』のレコーディングの後に、野田さんが倒れたという話もありました。

渡辺:それくらい肉体も精神も追い込んでいくので、必ず倒れるんですよね。大変でした。

Rolling Stone Japan 編集部

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