古川本舗が語る、5年ぶりの活動再開と自主レーベル立ち上げの理由


ー「夜」というキーワードが思い浮かんだのはどういうきっかけだったんでしょうか。去年、コロナ禍で人々の暮らしや価値観が変わったというのは、古川本舗としてのクリエイティブには作用しましたか?

後々気付いたんですけれど、去年の緊急事態宣言が出て、なるべく人と会わないでくださいということになったときに、みんな困ったという話をしていて。当然僕も東京に住んでいますから、同じ状況下にいるわけですけど、普段と何も変わらなかったんです。表現したい内容とか方向性がコロナによって変わったり、緊急事態宣言によって何かの影響を受けたりとか、そういうことはなかったです。至っていつも通り、誰にも会わなかった。ただ、だからこそより一層ちゃんと孤独感と向き合うということに共感してもらいやすい土壌にもなったと思います。たとえば、そういう状況で何を考えるのか、何を欲するのかということを他の人からも聞くわけですよ。「家にずっと一人でいると、なんかちょっと鬱々としてくるんだよね」みたいな話を聞いたりすると「なんで鬱々とするの?」みたいに思ったりもして。

ーその感覚はすごくわかります。人に会えないもどかしさがある一方、一人でいる時の心地よさというものは確実にありますよね。「夜」というキーワードでも、ヒリヒリと傷ついているというよりも、むしろ温かみがあって居心地のいいものになっている。楽曲にはそういう感触が色濃く出ているなという感じはしました。

その感じはあるかもしれないですね。昔から、自分の中では諦めの美学を考えて表現をしてきたみたいなところはあって。例えば、色恋の歌にしても、誰それと思いが通じたからうれしいとか、通じなかったから悲しいという、大きなインパクトの瞬間を曲として表現するようなことは、ほとんどやってないんですよ。むしろ、それに対して達観しているような状況を描くことが多かったんですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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