斧で夫婦を惨殺、犯行現場の屋敷に約2億100万円の高値がつく理由

超常現象ももれなくセットでついてくる?

そうした不思議な現象のひとつは数年前、毎年8月4日に行われる殺人事件の再現劇の週に起きた。セントジョンさんはブリジット・サリバン役だった――アイルランド系の住み込み家政婦で、事件当日に家にいたことから当初容疑者として名前が挙がっていた人物だ。「突然目に痛みを感じて、涙が次から次へとあふれてきたんです。『いったい何事?』という感じでした」とセントジョンさん。涙が落ち着いたところで彼女は目をぬぐい、ツアーをやり終えた。「あまり深くは考えませんでした」と彼女は続けた。俳優数名がB&Bに泊まったが、そのうち2人は滞在中なにか強い力で目を突かれた、とのちに語った。「その時、私も目を突かれたんだ、と気づきました」と、セントジョンさんは語る。「そういう体験が何度かありました。取り乱したりはしませんがね」

セントジョンさんや再現劇の俳優だけではない。B&Bの宿泊客が滞在中に超常現象を体験したという類の話は枚挙にいとまがない。だが、こうした出来事が訪問客の足を遠ざけることはなく、屋敷の購入希望者の心をくすぐるようだ。「素晴らしいチャンスですよ」とセントジョンさん。「だって、歴史を買うチャンスなんてめったにないでしょう? 歴史を手に入れるんです。市場を独占することができるんですよ」

一方でフォールリバー歴史協会のマーティンスさんは、自分が知る限りどちらの物件でも超常現象がおきた話はこれまで聞いたことがない、と言う。「屋敷の元住人のご家族と時々連絡を取りました――あるいは個人的に知り合いなんですが」と彼は言う。「いずれのご家族も、みなさんが経験しているようなことは一度もなかったそうです」

それでも、彼のもとには定期的に、超常現象の調査員やドキュメンタリー番組のスタッフからボーデン宅での超常現象疑惑に関する依頼が寄せられている。だが歴史協会は純粋に、リジーの裁判や殺人事件前後の彼女の人生を学術的にとらえている、と彼は言う。「ここで我々が携わっていることとは全く無関係です。我々としては、皆さんがやってらっしゃることにお力になれることは何もないのですから」と彼は語った。

最終的に誰が2番街の家を手に入れるのか――そして多くの人々が信じているように、アンドリュー、アビー・ボーデン夫妻殺害の責任を取るのか――はさておき、購入者は1892年8月4日に実際に起きた史実を心に留めてほしい、とマーティンスさんは願っている。「2人の人間が惨殺されたことを、みなさん忘れがちです。(歴史協会では)そのことに深い同情を寄せ、センセーショナルに騒ぎ立てたりしないようにしています」と本人。「ボーデン殺人事件には非常に多くの方々が関心を寄せていますが、リジー・ボーデン・ランドにはならないでしょう――そうなるべきではありません」

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from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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