ザ・ホワイト・ストライプスが挑んだ音楽の「再定義」とは? 2000年代ロック最大の発見を振り返る

「セヴン・ネーション・アーミー」がアンセムになった理由

再び彼らのキャリアに話を戻そう。ホワイト・ストライプスの名を世に知らしめた『ホワイト・ブラッド・セルズ』から2年後、まさにロックンロールリバイバルの熱狂の真っただ中に投げ込まれた決定打が『エレファント』(2013年)である。

これは、戦前のデルタブルーズ、カントリー、フォークを必要最小限「以下」のバンド編成で再構築し、ガレージロック的な激しく生々しい演奏で叩きつけるという、彼らの当初からのコンセプトがひとつの完成形を見た作品だ。

白眉は何と言ってもアルバムのオープニングを飾る「セヴン・ネーション・アーミー」。2000年代の最高峰に位置づけられる7つの単音で構成される完璧なギターリフ、そしてbpm120前後で揺らぐドラムビート。ほぼそれだけでしかない極めてミニマルな構造ゆえに、延々と繰り返されるリフの快楽性は余計に際立っている。そして、プレコーラスから徐々に激しさを増していく演奏は、ヴォーカルの代わりにギターリフで引っ張るコーラス(と解釈していいだろう)に至ると爆発的なカタルシスを生むのだ。

The White Stripes - Seven Nation Army


奇しくもこの曲はダンストラック的な構造を持っていたため、インディロックとクラブミュージックのクロスオーバーという当時の機運の後押しも受け、無数のブートリミックスが作られて世界中のダンスフロアで毎晩のように鳴り響くことにもなった。まさにジャンルの壁を越えた、時代を象徴するアンセムだと言っていい。

二作連続で大傑作を作り上げ、バンド結成当初からのビジョンが一つの完成形を見たとなれば、普通はその後に待つのは停滞だ。しかし、ここからの変化と進化によって、むしろさらに凄みを増していったのが、ホワイト・ストライプスが特別なバンドたる由縁でもある。では、この先はキャリア後期の二作を詳しく見ていこう。


Photo by Pieter M van Hattem

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