ザ・ホワイト・ストライプスが挑んだ音楽の「再定義」とは? 2000年代ロック最大の発見を振り返る

時代の最先端となったストライプスの音楽ルーツとは?

ホワイト・ストライプスの名前がセンセーショナルに世に響き渡ったのは、いまから20年前の2001年。90年代オルタナティヴの残骸やラップメタルが支配的な状況への反動として、ロックンロールリバイバルと呼ばれるプリミティブなバンドサウンドへの回帰運動が世界的に起こり始めたときのこと。このムーブメントの火付け役はNYから忽然と現れたストロークスだったが、その「次に聴くべきバンド」を血眼になって探していたメディアによって発見されたのがホワイト・ストライプスだった。デトロイト出身の一介のガレージバンドだった彼らは、突如として時代の最先端に躍り出ることになったのである。

だが、ホワイト・ストライプスは、当時ロックンロールリバイバルと括られたバンドたちとはある程度の共通項を持ちながらも、同時に決定的に違っていた。それは、彼らのブレイクスルー作となった3rdアルバム『ホワイト・ブラッド・セルズ』(2001年)を聴けば一目瞭然だろう。その共通項とは60年代ガレージロックを彷彿とさせる荒々しい演奏。違っていた点は、当時のバンドの多くが70年代末~80年代初頭のポストパンクをヒントにしていたのに対し、ホワイト・ストライプスの最大のリファレンスは戦前のデルタブルーズ、カントリー、フォークだったということだ。

例えば「ホテル・ヨーバ」という曲を聴いてみてほしい。ジャック・ホワイトによるほぼ3コードのシンプルなアコギ演奏を基調にしたカントリーソングだが、壁や床をバカスカと叩いているようなメグ・ホワイトの笑えるくらいパワフルなドラムビートが荒々しいエッジを生んでいる。コーラスでのクラッシュシンバルの連打も効果的だ。極めてシンプルなアイデアながら、(オルタナカントリーとはまったく別の方向から)ここまで生き生きとカントリーを蘇らせたアーティストはほかにいない。

The White Stripes - Hotel Yorba


一方、ミシェル・ゴンドリーによるMVも話題になった「フェル・イン・ラヴ・ウィズ・ア・ガール」は、わずか1分50秒で終わる真正ガレージパンク。ジャックのギターはお得意の粘っこいブルーズスタイルではなく、どこまでもストレートでトラッシー。ほとんどヴァースの繰り返しだけで押し切るシンプルな構成だが、中盤から飛び込んでくる子供がふざけて歌っているようなコーラスは耳について離れない。ミニマムだが効果的なインパクトを残す、理想的な一曲だ。

The White Stripes - Fell In Love With A Girl


この2曲が持っていた音楽的アイデアの新鮮さと、その振れ幅。それだけでも彼らが時代の寵児となったのは当然と理解できるだろう。


Photo by Pieter M van Hattem

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