映画『ヤクザと家族』藤井道人監督が語る、義理人情の尊さと「FAMILIA」MV制作秘話

『ヤクザと家族 The Family』出演の舘ひろしと主演の綾野剛(©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会)


―今回の作品では「煙」が象徴的に使われていますね。

“煙”は、今作のメタファーです。『デイアンドナイト』という山田孝之プロデューサーと一緒に作った映画は、“風”、『新聞記者』は、“落ち葉”。今回は煙にしました。オリジナルで、自分で映画を作る時は何かメタファーを一つ入れるようにしているんです。ヤクザ映画をやるなら義理人情をどう描くかってなった時に、言葉じゃない視覚的なアプローチを“煙”で表現しました。その煙が、章によって持つ意味が変わってきたり、食卓のシーンに出ている湯気にもその意味が重なったり、海の中で血って赤い煙にも見えたり…。人間って色んなものを纏っているわけですが、それが自分の中での“社会”っていう表現になるんです。言葉で「社会、社会」って、たくさん言うより、映像の中にそういう表現で入れられないかなと思って今回はしつこいぐらい煙が出てきます。

―今時には珍しいほど喫煙シーンも多いですが、タバコの煙もそういうことだと?

そうなんです。タバコの煙のように、煙たがられる存在であるヤクザがどういう行動をしているのか。という一個一個もすごく大事だと思うし。第3章で嫌な警察官がアイコス吸っているのは、僕のちょっと反抗心です(笑)。僕はまだ紙のタバコなので。

―ヤクザのような煙たい存在の排除がどんどん進んでいる中で、そこでしか生きられない人の場所が狭くなってきている。J.D.サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』でも、主人公・ホールデンは金至上主義のインチキ野郎どもに嫌気がさし、彷徨うが、物語の最後、ホールデンは精神病院にいることがわかる。排除は危険だと感じる一方で、どういう社会にすべきかの設計図がない。監督の中では何かイメージはありますか?

コロナさえなければっていうプランがあったんです。一見気にしないテーマというものを、エンターテインメントというか、小さくて作家性が強いけどミニシアターでかかるようなものじゃなくて、ちゃんと地方に届くようなものに練り込む作業をこの10年ちゃんと続けていければ、映画の見方が変わったり、映画が教えてくれることが多くなったりすると信じてきました。だから、映画の中に問いかけを多く入れてきたんです。けれどコロナのせいで色々プランが崩れてしまった。正直、今現代劇を撮りたくないなって気持ちになっちゃってます。追突事故で入院中みたいな気分なんですよね。これは全業界そうだと思うんですけど。コロナ自体が論理的じゃないんですよ。社会の憂いを描いていく中で、本当急に横から来たものに対しての向き合い方が今は全然わかってない。それでも、去年は分かっていたと思うんです。去年は「乗り切ろう!」「頑張る!」「頑張れる!」「それでもやるんだ!」という、アティテュードを見せればいいって。昨日クランクインだったんですけど、もう心が折れるんですよ。もう何回も心折れてます。で、誤魔化して生きているけど、これ来年まで誤魔化すのは無理かも。と、思っているのは事実ですね。明確なゴールみたいなものを持てていないのは自分の中でもすごく焦っていて。2020年以前のことしか描けない。2020年の話だと、登場人物はマスクをしているのか、それ見て誰が面白いんだろう。それはエンタメなのか、など色んな疑問が浮かんできてしまい、自分自身まだ答えが出てないですね。


主演の綾野剛と藤井監督(©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会)


―そこはアーティストの皆さんが試行錯誤しているところだと思います。ただ、0から1を作るのがアーティストの役割。更にいうと、今色んなルール化が進んでいる中で、道徳やルールの外に連れ出してくれるのがアート。しかも今作のモチーフそのものがルールに適応できない人達の話なので、二重の意味でこの映画を観るべきと思います。

ありがとうございます。時代が重なったっていうか、コロナが来て幸か不幸かみたいなところもありますね。別の意味合いも加わってくれたからよかったですが、もしかしたら2020年にこれを撮っていたら全然違う作品になっていたなって思いますね。2年前で良かったっていうのは正直ありますね。

―先ほど出た「問い」でいうと、「良い作品」は、君はこれでいいのか?という問いと、「君はこれでいいんだ」という安心感の両方を与えてくれますが、この作品には両方を感じることができました。

それはめっちゃ嬉しいです(笑)。

―まだ映画を観てない人のために、監督からこの作品の問いをあらためて言葉にすると?

他人事じゃない風に観てくれると嬉しいですね。『ヤクザと家族』という結構強気なタイトルですけど、“あなたと私”くらいの気持ちでこの映画を作ったので、決して他人の話じゃないよ、一つ社会にみんなが生きているという話だよ、という風に観てくれると、さらにこの映画を楽しめるんじゃないかなと思います。

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